*そして愛に変わるまで*

「……瑛…くん…?」

掛け布団を引き下ろそうとする俺の手にそっと重ねられる温もり。
いつの間にか顔を出したあかりが、心配そうな不安そうな瞳で見上げる。
あの頃とちっとも変わらない、俺だけの記憶にあるその表情。

「瑛くん…どうかしたの…?」
「いや、なんでも?」

窓から届く凪いだ真っ白な輝きを左目に感じながらあかりをまっすぐに見下ろし、重ねられた手をひるがえしそっと重ね合わせた。

俺よりもはるかに小さな掌。
幾度となく繋いでいるのに新鮮に感じるのは、俺の部屋だからなのか。それとも目の前のあかりの姿がそうさせるのか。

じっと見つめ続ける俺の視線に、最初こそは不思議そうに見つめ返していたあかりだったが、いたたまれなくなり始めたのかうろうろと視線をさ迷わせ始める。

―――いつものあかり。

学校で、店で、普段俺に見せるどこか子供っぽいその表情はさっきまでとはまるで違っていてなぜかおかしくなり噴き出した。

「……ぷっ。きょどりすぎ…って…。おまえの手、あったかいのな?いまさら気付いたけど。」
「ひどい。じっと見るんだもん、恥ずかしくなるの当たり前だよ。…手?そうかな?瑛くんだってあったかいよ?…いつも。」
「んー………?そう…………っッ!!」

俺の言葉に一度膨らませかけた頬を戻し重なる手に目を向けたあかりが、するとずらせた指先を俺に絡めてきゅっと握る。

―――――ぞくり。

指の間を通るあかりの細い指の感覚に、腰から背筋。毛穴が開くようなぞくぞくとした粟立ちが勢いよく伝ってはい上がり、思わず握り返した掌の力が抜けて小さく身震いした。

「ど、どうしたのっ?」

離れかけた掌を繋ぎ止めるように強まる力と慌てた声に、うなだれた頭を起こしあかりの顔を見つめる。

「……なんか…ぞくって…。」
「え?もしかして寒気?気分とか…。」
「そうじゃなくて。…なんだろ…気持ち悪いとかじゃないんだ…。」
「そうなの…?本当に…?」

検討違いな心配をするあかりと絡め合う指を解くが、さっきのような感覚はない。

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