どこか自嘲じみた微かな笑み。
サクサクと砂浜をつま先で掘り起こしながらあかりが小さく呟く。
その蹴り上げられ、小さく作られていく山を見つめながら、混乱する頭を回転させた。
あかりが俺を避けている事を、針谷は知っていた。
あかりを昼休みに呼び出し、俺も同時に呼び出した。
でも、俺には呼び出しを食らったと…――。
「……―――!!………あいつ……。」
その瞬間、昇降口で捕まえた時の針谷の顔が頭に浮かび、どうしてあんなに余裕があったのか、あいつが何を考えていたのか、はっきりと分かった。
俺すらも気付いていなかった俺の気持ちを、針谷は先に気付いていたという事なのか。
音楽室でいつもなら有り得ない不自然な場所に座っていた事も、目にゴミが入ったくらいであんな動作をする事も。
「……俺に気付かせるため、か。……くそっ…カッコ悪すぎ…。」
「えっ―――!?」
毒づき呟く俺の声に、弾かれたようにあかりが顔を上げ俺を見上げるのが分かる。
針谷が何をしようとしてたのか、それ以前にあかりは俺の気持ちの変化なんて―――、いや、最初からあった特別な感情なんて分かっているはずも…このままはっきりさせずにいたら、きっと、一生気付く事なんかありえない。
今回はただの俺の勘違い。
だけど……この先、同じ事が、同じ胸の痛みを感じる事があるはず。
大切な物なんてこれ以上ないと思った。
増やせないとも思った。
でも………それでも。
視界に広がる白い砂を瞼を閉じて遮断する。
深く、深く、息を吸い込み、吐き出す。
海に潜る前のように深く。どこまでも息が続くようにゆっくりと。
最初からだったような後からだったような。始まりさえ曖昧な俺の気持ちを伝えるため、掌を握りしめて顔を上げる。
「………いいか?あかり。よく聞けよ―――?」
サクリ、と…砂浜に一歩を踏み出す音を頭の中に響かせながら、俺は真っすぐあかりを見つめたのだった。
END