*一歩踏み出す勇気*

「……………ああ…あいつ…松本って苗字なのか…知ら―――。」
「知らなかったのっ!?」
「知るわけないだろ!この間まで話した事もなかったんだし。」
「でもでもっ!仲良さそうに話して――。」
「ない。つーか、あれのどこが仲良さそうなんだ。それ以上に、あいつが言ってる事真に受けて…おまえの目と耳、悪すぎなんじゃないか?」

俺はあかりを見下ろし、あかりは俺を見上げ、お互いが言葉を終える前に畳み掛けるように言葉を挟む。

前のめりに見上げ食らいつくように見上げていたあかりの顔が、俺の投げるような声に次の言葉をなくして俯き、僅かな静けさが訪れた。

「だって……。」
「だってもへったくれもない。だ・い・い・ち。…いつ俺にその年上の彼女とやらがいたんだよ?見た事なんてないだろ。当たり前だよな?そんな奴、いるわけないんだから見るはずがない。」
「でも……。」
「そ・れ・よ・り、だ。話をすり替えてるけど、本当は針谷がいるから針谷が好きだから俺を避けてるんだろ。じゃなきゃ、キスなんてしないもんな?でもな、俺は針―――。」
「ちょ、ちょっと待って!ハリーは友達なんだよ!?そんな事するはずないし、好きは好きでも友達とし――。」

言い淀むあかりの声に、苛々が募る。
浮かぶのは包み込むようにあかりの頭を引き寄せた針谷の手、ふわりと靡いたあかりの髪、スローモーションのようなあの光景。
そして、さっき見せた宣戦布告のような針谷の笑み。

あかりを捕まえた目的、言わなきゃならない言葉すら頭に浮かばず、ただ理不尽に責める言葉だけが口から溢れた。

「嘘つけ!俺はこの目で見たんだよ!昼休みに!!」
「あ、あれは!ハリーの目にゴミが入って痛そうだった――………瑛く、ん…来てたの……?」
「―――えっ……!?」
「あのね…?……知ってたの。最近…私が瑛くんを避けてるの。それで…話聞いてやるから来いって。話すつもりは最初からなかったから…ハリーには何も話してないんだけど―――。」

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