*僕だって恋くらいする*

「しつこいようだけどさ、明日…ちっと話…があるんだよな。あー、昼休み入ってすぐに職員室に呼ばれてるからさ、あんま慌てなくていいんだけどよ?っつーことで、よろしくな?」

もう寝ようかと、部屋の電気を消した深夜に入った針谷からの電話。

俺の返事を聞く事なく用件だけを告げられ、切られた俺は、舌打ちしながら携帯を折りたたむ。
昨日の放課後あんな話をして、昼休みに顔を見せなかったからなのか、相変わらずしつこいくらいにお節介だと枕元に投げつけベットに転がった。

……いまさら何を聞こうとしているのか。おれから断ち切ったわけではない。

そのきっかけを作ったのも、俺を遠ざけたのもあかりじゃないか、と毒づく気持ちを抑えられないまま頭からすっぽりと布団を被り、浅い眠りのまま朝を迎えた。

相変わらずちらとも俺を見ようとしないあかり。もう俺には関係ない事かと視線を外して授業に集中する。

たとえ、あかりがあの時の相手だったとしても…あの約束があったとしても、俺だけが覚えている約束なら意味はないし、ただの子供の口約束、戯れ言と同じ……。

ふと吹き抜ける柔らかい風にノートに写していたペンを持つ手を止め、窓の外、昼の白い光が反射する海を眺めた。
柔らかく輝く凪いだ海はなんだか優しくて、胸の奥が締め付けられるような少し泣きたくなるような。

――――だから、もういいんだって。

感傷的になる穏やかな光から目を反らすように瞼を閉じると、大きく溜め息をついて黒板へと向き直り、またペンを走らせる。

一面真っ白になるくらい書かれた文字は、かなり必死にならないと時間内に写せそうにないけれど、自分の頭も真っ白になってくだらない事を考えずにすむ、と、少し癖のある小さな文字に目を凝らして集中するのだった。

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