*こんなの不条理だ!*

「何だよー。自分は余裕だからって、俺達を無視すんなよー!」
「いや、そういうわけじゃないんだけど。だからね?僕の意見は参考にならないから…。」
「ならないわけないだろー?実際お前はモテるじゃねーか!あ、あれだな?俺達に取られたくないから「いや、それは違うから。」

そんな事あるわけないだろ。バカな勘違いを起こし、ガキみたいに俺の鼻先に向かって指を差すバカなクラスメートの手を何気なく払いのけながら口を挟む。

―――どうやったらこのバカ達が納得して引き下がるのか。

旅行までの僅かな時間だって惜しいんだから無駄に過ごしている暇はないんだ。
ぎゃあぎゃあと騒がしいクラスメートを何とか誤魔化そうと口を開きかけた瞬間通り掛かったのは……。

「お前らってさ、バカじゃないのか?モテる佐伯に聞いても分かるわけないだろ?」
「なんでだよ。モテるから聞いているんじゃないか!」
「……やっぱりバカ。佐伯は黙っててもあっちから来るんだよ。って事は、告白する必要がないの。こういうのは経験者に聞けば早いんだよ。例えば……俺?」

もうすぐ授業が始まるというのに、後ろ手をひらひら振って教室を出ていく。
そして今まで俺に群がっていた奴らは蜘蛛の子を散らすようにいなくなりそいつを追う。……口々にさっきのセリフを叫びながら。

……つーか。……今の奴………誰?

確かにクラスメートなはずだが、正直名前も分からない。
黒髪、短髪の爽やかスポーツマンタイプのあいつ。
一つ言える事は、あいつが天の助けだったという事だ。

今度話す機会があれば、名前を聞いて……もしかしたらいい友達か何かになれるかもしれない。

『ありがとう、スポーツマン』
と心の中で感謝を述べながら、残り少ない休み時間を店の事で頭をいっぱいにさせた俺が、昼休みには前言撤回する事になるなんて、この時点では知る由もなかった。

それは……。

prev next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -