*子供時代

「ねえ、瑛くん。」
「うるさい。」
「まだなんにも言ってないよ!」
「あかりの事だから、どうせくだらない事だろ?つーか、口動かす暇があるんだったら手、動かす。まだ始めたばかりだろ。」

遊びに行く予定を立てていた連休初日の目論みは、珍しく大量に出された宿題に阻まれ、どうせ会う予定だったんだしと物置から引っ張り出したテーブルに向かい合い積み上げた宿題と格闘していた。

と、言っても格闘しているのはあかり一人で、やれ単語の綴りが分からないだの文法がどうだのと床に教科書やら辞書を次々と並べ、あかりが座る方の床一面は紙の絨毯で敷き詰められている。

始めて三十分もしないうちから飽きたのか手にしているシャーペンが動く気配はなく、俺の頭に降るあかりの声に顔を上げる事もせず数学の問題を解きながら答えた。

「ちょっと休憩しようよ〜」
「だから、今始めたばっかだろ。休憩は一教科終わってからなの。そんなんじゃいつまでたっても終わらないって言ってるだろ。」
「…瑛くんのけち。」
「ケチで結構。」

さっさと終わらせたらどこかに出かける事も出来るのに、勉強に関しては飽き性というか耐久心のないあかりは数問と向かい合っている事が出来ないようで、俺にちょっかいを出しては当たり前だが叱られ、渋々また宿題に向かっている。

相変わらず遠くに波音しか聞こえない殺風景な部屋の中に響くのは、俺が奏でるリズミカルなペンの音と、あかりのたどたどしいペンの音

「う〜ん。……あ、そうか。……え?あれ?」

……よりも大きいあかりの一人悩む声。
俺の視界にちらと入るあかりのノートの上には忙しなく消しゴムをかける手の動きばかりでどうにも進んでいないのが丸わかりなのだが、あまりに早く助け舟を出すのはあかりのためにはならないと知らん顔で自分の宿題を先に片付けようと精を出していた。


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