*真夜中

なんとなくおやすみが言いたくて…。
もし眠ってたらごめんね?

光る画面に浮かび上がる文字。
あかりらしいようならしくないような。
引っ掛かるものがなにかあるような気がして返信ボタンを押す。

メールが届いてからかなり時間が経っているがまだ起きているのだろうか。

ふとそんな事が頭を過るものの、着信音を大音量にしていなければあかりの事だから目を覚ます事なんてないだろうと軽い詫びだけを入力して送り返した。
問いかけるメールにしなかったのは、眠ってるかもしれないあかりが目を覚ました場合の事を考えて。あいつのことだから律儀に返事を打ちこんでいる間に眠気が飛ぶような気がしたから。
あれなら時間が経ってから気付いても真夜中だからと諦めるだろう。

パチリと蓋した携帯をポケットに突っ込んでコーヒーを口にしながら窓際へ歩む。
窓の外は月明かりが殆どないのか真っ暗だ。ただ、静かな波の音で海の穏やかさが感じられた。

「朝は無理、か……。」

たぶんこのまま朝まで波は穏やかだろう。
例え波が期待通りになったとしても、今から眠って夜明け前に起きるなんて学校のある平日の今日は到底無理だ。今でもギリギリの睡眠時間、本当ならばこうやって一息入れるよりベットに入った方がいい。分かりきってはいるけれど、少しでも海を傍に感じていたくてもう少し、このコーヒーを飲み干すまでと窓の外を眺めていた。

「………ん?」

さっきポケットの中で突っ込んだ携帯が連続して振動する。
返事が返ってくるのが早いという事は、起きていたか眠ってすぐだったから目を覚ましたのか。

コーヒーに口をつけたままポケットに手を伸ばし、震えたままの携帯を取り出す。
カチリと開くとやはり眠れなかったらしい文面が少しだけ記されていた。
少し悩んで一度携帯を閉じ、再びポケットに捩じ込む。
突っ立ったままの店の中より部屋の方がゆっくり出来る。

左手にカップを持ったまま右手で教科書とノートを重ね小脇に抱える。店の中をゆっくりと見渡し、カウンターの照明を落とすと外よりも闇が深くなる。
階段までの距離、一段の高さ、段数、部屋までの歩数。
身体に染みついた感覚は確かで、暗闇の中部屋に戻ると薄く月明かりが差すベットに歩みギシとスプリングの音をさせながら腰を下ろした。



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