*初雪

嬉しそうな笑顔があかりに浮かんでいる事を背中に感じながら……。
俺の頬が赤いなんて……気付かれてる事なんてないはず。……たぶん。
掌が熱いのも、汗ばんでるのも全部さっきのよく分からない競争のせいなんだ。

「……うわっ…!」

そう自分に言い聞かせながら引く手を強く引き戻され反対に後ずさりしてあかりの隣に並ぶ。

「……いったいおまえはなんなん―――!」

変な方向に引かれたせいで痛む肩を摩りながらあかりに顔を向けると、ぽかんと大口を開けて見上げている。

―――相変わらずの間抜け顔。

考える事がなさそうな、と言うか悩みがなさそうな言うか、毎日が平和そうなと言うか。思わずまじまじとその横顔を見つめているとくると振り向くその顔は満面の笑みで思わずたじろぐ。

「……な、なんだよ……。」
「瑛くん!雪だよ、雪。寒いと思ったんだよねぇ?」
「は?」
「ほら!小さいけど、真っ白。見えない?」

繋いだ手を空へと伸ばし見上げるあかりにつられて鈍色の空を見上げて目を凝らすと、濃い灰色の中にほんの小さな白が見え思わず声を上げた。

「…………あ。」
「ね?雪、でしょ?」
「……どうりで。寒いと思ったんだ…。」
「えー?それだけー?」
「それ以外になにがあるんだよ?」
「あるでしょ?綺麗だね?とか、一緒に見られて嬉しいよ?とか!」
「……おまえ、なんかの映画の見すぎ。雪なんか降ったら寒い。あー、寒い。こんなとこにいたくないから教室に入る。おまえはずっと見てろ。」
「やだ〜!瑛くんの手、あったかいから離さないも〜ん。ず〜っと、誰かが来るまでこうしてるんだも〜ん。」

ぎゅっと。ぎゅっと両手で俺の手を握り締め後ろ向きで俺を引くように前を歩く。繋がる掌がしっとりと汗ばむのは俺だけのせいじゃない。きっとあかりも。
なんとなくそう感じるのは、あかりのうっすらと赤い頬のせい。これは寒さだけなんかじゃない。……たぶん俺と同じ。

向かいあってる。お互いの顔だけじゃなく、きっと見えないものも……真っ直ぐに。

それに気付く事が出来たんだから、寒さも…雪も悪くないか。

なんて事を考えて校舎に入る前に空を見上げたのだった。

END


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