01 肩に手に

学校行事なんてくだらない。
去年はそう思っていたし、今年も、きっと来年だって変わらない。
ただ、去年と少し違うのは、まったく無関心でもないって事。

6月に入ってすぐのホームルームでその話題が議題として上がっていた。
黒板に書かれていくのは、体育祭で行われる競技名。

全員参加ではないんだから、俺以外のやりたい奴が勝手にやればいい。

話は聞いているフリをしながら頭の中では今日帰ってから店を開けるまでにする事を考えていた。

ブラウンシュガーはまだ大丈夫。ペーパーナプキンはそろそろ発注。あとは……なにかあったっけ。そうだ、そろそろ三温糖がなくなるってじいちゃん言ってたっけ。それから―――。

「佐伯くんと大崎さんがいいと思います」

倉庫の中と店の中、在庫の品を頭の中に浮かべていたせいで、突然耳に飛び込んできた自分の名前に反応が遅れた。

「……えっ?」

確かに自分の名前は聞こえた。でも、もう一人、誰かの名前も呼ばれた気がする。
黒板には決定事項のように自分の名前が書き込まれ、その隣に聞き慣れた名前が並んでいた。

俺にとっては終わってからが本番なのに、なんで体力が減るような事をわざわざやらなきゃならないんだ。
つーか、おまえだってそのことくらい知ってるんだろ。と、前の席に座るもう一人の背中を睨みつける。

「えっと……、僕じゃなくても、もっと足が早い人がいるんじゃないかな?」

そう。今年は脳内筋肉バカ、つまり運動部所属の生徒が多いクラス。こういう時こそこいつらの出番で天下。
わざわざ帰宅部の俺が前面に立つ必要はない。立ちたくもないけど。

「去年は二人共凄く早かったじゃないか」
「そうそう、息ぴったりだったよね」

どこからか声が上がる。
誰だ、余計な事を言う奴は。そして賛同する奴は。
だけど、ぴったり?なにがぴったりなんだと改めて自分の名前が書かれた隣にある競技名を確認した。

―――二人三脚。

お互いの片足を結んで一本に固定し、二人がひと組となって早く走る競技。
すなわち、俺が断れば天音は他の誰かとそうなるわけで―――。

「えーっと……そうだったね!それじゃあ、大崎さん、よろしくね?」
「えっ!?う、うん。佐伯くん、がんばろうね?」

あっさりと手の平を返す俺に驚いたような天音。

それも無理はない。
終わってからが本番と話したのは一昨日、一緒に帰った時の事だったし。
この様子だと、あとでどうして〜とか、言い出すに決まってる。
まぁ、そういう時は問答無用でチョップだけど。
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