霞みの空

短い春休みも終わり、桜吹雪舞う校門と掲示板の前に溢れる生徒達。
合間を縫うように前に出て、張り出された名簿から自分の名前とクラスを確認した後、真っ先に探し出す名前は……。

―――今年も同じクラスか。

学校でそうそう話せるわけじゃないけど、少しでも同じ時間を共有出来る事にホッと胸を撫で下ろす。

去年の今日は、自分の傍に誰も近づけさせようとはしなかったのに……。

校門を潜ってくる緊張気味の新入生を目に映しながら、小さく苦笑いする。

たった一年過ぎるだけで、こんなにも自分の心が変わるなんて。

本当は、こんな感情を持ってる事はよくないのかもしれない。
気にかけるものが増えれば増える程、大切にしている事の場所が少なくなる。

自分自身が目指しているものの事を考えれば……。

でも……気にかける事、あいつが…天音が傍に居てくれる。
俺が俺で居られる場所が少しだけでもあるという事。

どっちがいいのかなんて分からない。
ただ……もう少しこのままでいたい。
もう少し、いや、もっと近くにいたいと思う。

だから……そう思うのなら、今まで以上に頑張らないと。

いつものように愛想笑いをしながら、新しい教室を目指す。

「あ、おはよう、佐伯くん。」
「ああ、おはよう、大崎さん。」

まだ席も決まっていない教室。
それぞれが適当に席に着く中、窓際に座った天音の後ろの席に腰を下ろす。

「よくこんな特等席残ってたよな?普通、ここから消えるだろ。」
「ん?あ、そういえばそうだね?でもあれじゃない?自分のクラスに誰が来るか気になるとか。廊下側がいっぱいになってるし。」
「ふーん。そんなもんか?名簿で分かるだろうに」

『ほら』と指す天音の指先を見つめながら頬杖をつく。
誰が一緒のクラスになったところでたいして変わらないだろ。
それこそ一人だけ、何処のクラスか気になるなら分かるけど。

「そうだよね?私も自分のクラスはチェックするもの。もちろんお友達とかも。ちなみに今回同じクラスなのは、佐伯くんとハリー。女の子は全滅でがっかりなんだ〜。」
「え?!そうなのか?!」
「うん。そうだけど…佐伯くん見なかったの?」
「……見てない。」
「そうなんだ?あと…声、今大きかったよ?」

『し〜っ』と人差し指を口元に当てる天音の前で、一瞬浮かせた腰を席に下ろす。
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