向き合う勇気

テストも近くなったある日、HRが終わった瞬間教室の扉が開いた。

「オーッス!天音 用意できたか?」

針谷のよく透る声。

(針谷と何か約束してるのか?)

「ハリー! 早いね?」

「善は急げだ! 行くぞ?」

「わ! ちょっと待って!」

慌てて教科書を鞄にしまい立ち上がった天音と目が合う。

「佐伯くん また明日ね?」

一瞬何かを探るような瞳。
こんな瞳を初めて見る。

「うん。さよなら 大崎さん」

何となく居心地が悪い気がしたけど、なんでもないフリをして返事をする。

本当はすごく気になるのに。

慌てて教室を走り出る天音の背中を 一瞬だけ見て溜め息。
今出て行けば、見たくないものを見てしまう。

それでも早く学校から出ないと、また女子に捕まってしまうから、重い足取りで教室を出る。

もうすぐ階段に差し掛かるというところで 校門を出ようとする二人が見える。

窓の外なんて見なきゃいいのに……まるでカメラの望遠レンズでピントを合わせたみたいに二人が見える。

天音の笑う横顔が、俺と居る時よりも楽しそうに見えて、痛む胸に気付かないフリで視線を逸らす。

「ごめん…ね? 今日は本当に急いでて……。また、今度ね?」

結局、何処かで会ったら……と思うと足取りが重くて、校門近くで女子に捕まり、なんとか言い訳をしている。

何やってるんだか。俺。バカみたいだ。

はっきり聞かないから こんな事になるんだ。
気になって仕方ないんだから 聞けばいいのに。

まだ何も始まってもいないんだから、怖がる事なんてないはずなのに……
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