なんとなく気になって

あのアクシデントと、一緒に出掛けた日以来、大崎を見る回数が増えた気がする。

あいつが、まったく気付いてないのが不思議だよな?
普通 気付くだろ。
気付くよな?
あんなにはっきり触れたんだから。

その時の感触を思い出したら 自分の顔が赤くなるのに気付いた。

なに 動揺してるんだか。

別にあんなのたいした事ない。
ただの事故なんだし。
相手が気付いてすらいないんだから……。

たとえ あいつが―――

大崎があの時の――

人魚だったとしても。

そう思うのに 少しでも大崎の事が知りたくて……。

バイトがある日の帰り道、少し前を歩く。
そうすれば話しかけてくるのが わかってるから。
思ったとおり、大崎は他の生徒がいなくなった頃声をかけてきた。

「佐伯くん!!」

小走りで隣に並ぶと、にこっと笑う。

「一緒に行っていい?」
「べつに、……いいけど。」

そう素っ気なく言っても、よかったと笑いながら隣を歩く。

「今日も海、綺麗だよね〜」

今にも歌い出しそうに 嬉しそうに歩く大崎に、いろいろ知りたいことがあったはずなのに 言葉が出てこない。

……やっぱり俺、バカになってる。

「そうだ! 佐伯くんって、いつからお店手伝ってるの?」
「へっ? なんで?」
「ん? だって物凄く詳しいでしょ?」
「そんな事ないけど……、中学の時からちょくちょく。コーヒー淹れさせてもらうようになったのは最近。」
「そんなに前からなんだ!すごいね〜?」

くりくりと大きな瞳を輝かせて俺を見る。

「―――おまえは?」
「えっ? 私?」
「おまえもかなり詳しいだろ。」

そうかな?と首を傾げ 思い付いたように堤防にひょいと登る。
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