海の花 陸の花

止まっていた時間が動き出すように、周りの人達が歩き出す。

「終わっちゃったね。」
「だな。ちょっと、ゆっくり行くか。」
「どうして? 」

俺は 出口に殺到する人の波を指差す。

「あの中に入る勇気ない。それに、はぐれるかもだろ?」
「ほんとだ。もみくちゃになりそうだね。」

手近なベンチに腰を下ろす。

「花火が終わった後の空って、なんだか淋しいね。」
「そうだな。急に静かになるからじゃないか?」
「感傷的になっちゃうよね。」
「……お前が? 感傷的?」
「ひどっ!」
「あははは!んじゃ そろそろ 行くか 」

ほら と手を差し出す。

「最後まで お世話をかけます。」
「ホントだよな。」
「う〜 ごめんなさい。」
「本気にすんな。」

チョップを入れて歩き出す。

「別に 迷惑だと思ってないし。」
「ふふっ なんか佐伯くん お父さんみたいだね。」
「……そうきたか。でも まぁ 手のかかる娘を持った気分だな。」
「大変だね? お父さん。」
「そう思うんなら 迷子にだけはならないでくれな。」
「大丈夫だよ! 今は 佐伯くんいるし、普段は知らない場所には行かないし!」

覚えたら迷わないんだから!と、得意げだ。

相変わらず 面白いヤツ。

見慣れた道まで来ると、人通りもまばらになる。

「今日は 楽しかったね〜」
「よかったな。」
「佐伯くんのおかげだね。誘ってくれて ほんとにありがとう。」
「来年は デートで行けよ?」
「……無理かも。」
「おいおい。諦めるの早すぎ。まぁ 相手いなかったら 付き合ってやる。」
「じゃあ スケジュール空けといてね?」

もう諦めモードか?と笑うと だってと拗ねるので、また笑う。
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