海の花 陸の花
内心、かなり慌てているが、大崎は気付く事なく 空を見上げている。
(よかった…… こいつぼんやりで)
ホッと息を吐き、花火を見上げる。
「佐伯くん! 佐伯くん! 」
また 引っ張る大崎に軽く動揺する。
「なに?」
「 下! 海 見て? 」
言われるままに覗き込むと、海面に写った花火。
「花が咲いたみたいだね〜!」
「本当だ。これはこれで綺麗だな。」
「うん! なんか得した気分だね?」
「だな。高くないと味わえないからな。」
「そうだよね!」
顔を合わせ、笑い合う。
(あれが海の花なら こっちは陸の花ってとこかな?)
うわっ なんか俺 キザ。
この、雰囲気に呑まれて変なこと考えてる。
この空気のせいだ うん。きっとそうだ。
今は、花火に集中しよう。
「佐伯くん?どうかした?」
「なんでもない。ほら 次上がるぞ?」
顔を上げると同時に、連打花火が上がる。
きっと もうすぐ終わりなんだな。
こうやって こいつと同じ時間を過ごすのも。
この 左手にあるぬくもりも。
ちょっと惜しいような 寂しいような……不思議な気分。
こいつはどうなんだろう。
少しくらい なにか感じてくれたらいいんだけど。
(でも 無理かな? こいつ ぼんやりだし)
俺だって こんな気持ちはよくわからないから説明できないし。