海の花 陸の花

この人込みの中ではぐれたら……。

「大崎さん。つかぬ事をお聞きしますが、今はぐれたら……」
「もちろん! 二度と会えません。」
「携帯持ってるだろ!」
「持ってる。でも佐伯くんの番号知らないよ?」
「……貸せ。」

はい。と手渡される。
とりあえず俺の番号と、ついでにアドレスも登録した。アドレスは必要ないけど とりあえず。

「でも たぶん無駄だよ?」
「なんで?」
「だって 方向さえわかんないもん。」

クラリと目眩がする。
思わず右手を振り上げた。

「いたっ!だから なんでチョップ?」
「お前がバカだからだ!」
「バカじゃないもん!」
「いいや バカだ! あ〜 もう!」

頭をガシガシ掻く。俺 こういうの苦手なんだけどな。

「ほら!」

左手を差し出す。

「なぁに?」
「手! 繋いどけば、はぐれないだろ!」

そっか!すごい!佐伯くん頭いい!と拍手する大崎の頭にチョップ。

「よろしくお願いします。」

涙目で頭をさする、大崎の手をひいて歩き出す。

「よく 今まで生きてこれたな。」
「知ってる場所しか歩かないもん。知らない場所は 事前に地図叩きこむの。」

それはそれで 凄いんじゃ?
けど 面白いやつ。

最初は、握った手の感触とか浴衣姿とか 色々気になってたけど、慣れてくると 周りを見る余裕が出て来た。
すれ違うヤツが大崎に見とれている。

まぁ 黙っていれば、かなりの美人だし。話すとぼんやりだけど。

「佐伯くんって凄いね〜。」
「なにが?」
「すれ違う女の子が カッコイイって言ってるよ〜。」
「は?」
「気付かなかった?」

気付いてないのは お前なんだけど。
やっぱり ぼんやり。
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