君の色 瑛Side

一時間後 携帯のアラームで目が覚めた。
かなり深く眠ったらしく、体も気分もすっきりしている。
服を着替え 髪をセットする。最後に鏡でチェックして……

(よし! もうひと頑張りするか!)

気合いを入れて 部屋を出た。
店に入ると 笑ったじいちゃんと、ホッとした表情の大崎。
心配かけたんだろうと謝ると、そんな事は、気にも留めていない様子で思わず笑う。
そんな俺に、安堵の表情を浮かべる大崎に なんだか嬉しくなるが そこである事に気付く。

(言わない方がいいかも知れない)

案の定 最初はにこやかだった大崎の顔が、みるみる青くなる。
どうしたらいいんだろうと書いてある顔で、ケーキと俺の顔に視線をさ迷わせる。
どうも出来ないので、見て見ぬ振り。

(閉店したら大騒ぎだろうな)

もう 何個目か判らないケーキを、無理矢理口に入れながら思う。
さすがに ヤバイと思い始めた頃、店のケーキがなくなりホッとした。

「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」

最後の客を見送り、看板を引き上げると、大崎が必死に訴える。

「佐伯くん!もう休んだ方がいいよ!後は 私がやるから!」

悲鳴のような叫びに、少し嬉しくなる。

「いいよ。動かないと消費できないし。」

これはマジで。今動かないと、胸やけで寝られない。心配顔の大崎に、もう一度大丈夫と笑うと 渋々納得する。
しかし納得した割には、俺に軽い仕事しかさせない。

(お前、心配しすぎなんだよ)

後ろ姿を呆れて見ていると、じいちゃんと目が合い苦笑いした。
あらかた片付いたので、着替えに部屋に戻る。
かなり胃は限界値を越えてるはずなのに、そんなには辛くない。

(気分でこうも違うのか)

以外と単純な自分に呆れながら、着替えを済ませて店に戻る。
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