君の色 瑛Side
一年間の中で一二を争うくらい嫌な日が来た。
――7月19日俺の誕生日――
校門に入るなり、たくさんの女子に囲まれる。
(朝っぱらから、勘弁してくれ)
心の中とは裏腹に 表笑顔でプレゼントを受け取る。
あぁ…… 教室がやけに遠い。
捕まっては止まり、止まっては進む。
着いた頃には、疲れきっていた。
先に登校していた大崎が、かなり驚いて見ている。
(初めて見たんだからそうだろうな。そういえば、入学式の時も、こんな顔してたっけ)
予鈴が鳴り、やっと開放される。
「あー 疲れた。」
思わず本音を漏らすと、「顔が戻ってるよ」と小声で指摘された。
(短い期間なのに、ずいぶん変わったよな)
そんな事を考えながら話してると、「お誕生日おめでとう」なんて言われた。
(なんで こいつが知ってるんだろ)
どうも 最近の取り巻きの行動を不思議に思って聞いたらしい。
気にしてもらうのは、嬉しいが……。
(………それだけ? )
じっと見ると 大崎は不思議そうな顔をしている。
(……なんだ そうか……)
なんとなく つまんない。女友達には、ケーキだのプレゼントだの用意してるのに……。
って!別にいいんだけどさ。期待してたわけじゃないし。
知ってるなんて、思ってなかったんだから。
休み時間の度に、囲まれて増えるプレゼント攻撃に、最初は唖然と見ていた大崎の顔が青ざめる。
(なんで お前が青くなるんだか)
ふと考えて思い付く。
(あぁ そうか。こいつはいつも人の事ばかり気にしてるよな)
無理矢理というわけでもなく、自然に。そして、それを押し付けるわけでもなく、当たり前のように。
表の顔をしながら ぼんやりとそんな事を考えていた。