天使の梯子

学校帰り 生徒もまばらになった頃、前を歩いていた佐伯くんが振り返るので小走りで追いつく。

「本当に、あのプレゼントで喜んだな。」
「千代美ちゃん?」
「あぁ 驚いた。」

あんな変なのどこがいいんだ?
なんて、失礼な事を呟いている。
そのあと、ふと思い出したように私を向いた。

「あれ うまかった。」
「パウンドケーキ?」
「あぁ 俺に比べたら、まだまだだけどな。」
「え〜 プロと比べるの?」

そんなの無理に決まってるよ、とぼやく。
だろうな、と満足そうな佐伯くんに思い出して尋ねてみた。

「仲良くなったら、呼ぶの?」
「なにが?」
「ハリーって。」
「呼ばない。」
「どうして?」
「気持ち悪いだろ。」
「そうかな〜。」
「あぁ 気持ち悪い。」

仲良さそうでいいのに。と言うと、眉間に凄いしわを寄せた。

……そんなにイヤなんだ……。

まあ、佐伯くんが爽やか笑顔で『ハリーくん』って言うのも、今のままで『ハリー』って言うのも、なんだか違和感がある気がするから、このままでいいかな……。

「お前 今何考えてた?」
「え? 佐伯くんが爽やか笑顔でハリーくんって……。」

ピクリと眉を動かした佐伯くんの右手が振り下ろされる。

「だから 痛いってば!」
「くだらないこと言うからだ。」
「しかたないでしょ? 想像しちゃったんだもん。」
「だもん。じやない!」

なんならもう一発いくか?と意地悪く笑うので、両手で押さえたままふるふると頭を振った。

「いらないです。」
「なんだ せっかくの愛情表現なのに。」
「だから そんな愛ならお断りです。」

どうしてチョップかな〜 と頭を擦りながら、ぼやく私を佐伯くんは楽しそうに見つめていた。
prev 4/7 next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -