天使の梯子

笑いを堪えた竜子さんが、宥めてくれる。

「そりゃそうだね。最初にクリスに会ってりゃ、当然そう思うね。」
「うぅ……、ごめんなさい。」

ハリーに向かい、頭を下げる。

「いや 別に天音が謝る必要ねーし。 むしろ 謝るのはオマエらだ。」

ハリーは、ビシッっとみんなに指をさした。

「なぁ クリスはなんで苗字なん?」
「スルーかよ!」
「ボクは 針谷クンの方が言いやすいねんもん。」
「なんや それだけなん?じゃあ 佐伯は?」

一人素知らぬ顔で 食べていた佐伯くんが顔を上げる。

「僕は、あまり仲良くないからあだ名で呼ぶ必要がないと思って。」

爽やかに笑って、断固拒否を表明した。
鮮やかな手際に 感嘆の声が上がる。

「ってことは、仲良くなればオレ様をハリーって呼ぶんだな。」
「どうかな?」

じゃあ手始めに、オマエからなとニヤニヤ笑うハリーと、素知らぬ顔の佐伯くん。
これからどうなっちやうんだろ……。

そのあと楽しくお昼を食べて、それぞれが教室に戻る。
志波くんだけ、お菓子を大量に持って行ったけど、あんなに食べて大丈夫なのかな……。少し 心配になった。

授業中に、……そういえば 佐伯くんが、付き合ってくれるのって珍しいなあ〜と、隣の席を見る。
いつもなら、女の子に連れて行かれるか、ふらりと何処かに行っちゃうのに。
ぼんやりと考えていたら、突然私に顔を向けた。

「なに。」

声は出さずに、聞いてくる。
私も、声を出さずに返す。

「ごめん、なんでもない。」

今は授業中だし 集中しないとね。
そう思い直し、ノートを取り始めた。

しばらくすると、隣から小さく折りたたまれた紙を投げ込まれた。
なんだろう?と思い広げてみると

『やっぱ 気になる。』

それだけが書かれていた。
これだけ?って思ったけど、とりあえず空いている所に理由を書いた。
折りたたんで投げ入れる。

『お昼、付き合ってくれるのって珍しいなって思っただけ』

読み終えた佐伯くんは、ちらっとこっちを見て何かを書き、また投げてきた。

『お前らに付き合った方が楽かと思っただけ』

なるほどね。私が指で丸を作ると佐伯くんが前を向いたので、同じように前を向く。
たしかに、私達なら騒ぐ事もないから多少は楽なんだろうなぁ。
prev 3/7 next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -