04 肩に手に

そして、漸く体育祭最後の競技。競技というより演目。
よく言えば和やか、俺の正直な気持ちで言えば脱力感しか出ない音楽が流れ、二重に輪になった生徒達がぐるぐると回る。

高校生にもなってフォークダンスだなんて、なにが面白いんだか。
体育の授業でも何度もやったんだから、もうやらなくていいだろとは思うが、うちのクラス担任が率先して輪にはいっているのだからなんとも言えない。

「あ、佐伯クンだ」
「よろしく」

ぐるぐる回る輪の中で、壊れた玩具のように同じ台詞ばかり言い続ける。
去年は気にも止めていなかったから覚えてないけど、今年はどうやら天音には当たらないと授業での練習中に気付いた。

まぁ、子供じゃないんだし?別にいいんだけど……なんとなく損した気分。

とりあえず、笑顔を浮かべ続けているのは疲れるから早く終われ。と溜め息を吐いたところで、誰かの手が離れ、また違う誰かの指先が触れた。

「あれ?佐伯くんだ」
「よろしく……って、おまえか。あれ?」

何度も聞く同じ台詞に愛想笑いを浮かべ、初めて相手の顔を見る。
顔も覚えていない女子だと思っていたのに、相手は天音。
練習中には一度も当たっていないのに、なぜだ?と辺りを見渡すと、天音も同じようにキョロキョロとしている。

「びっくりしたね」
「まぁな。つーか、おまえ、挙動不審すぎ。小動物か」
「だって。練習中には当たらなかったでしょ?」
「そうだったか?」

ちゃんと気付いてたんだ。
気にされてた事を知るだけで、ちょっと気分が浮上。なんか、俺って結構単純。

「体育祭、あっという間に終わっちゃうね?」
「そうか?俺は長かった……」
「ふふっ。お疲れさま」

今日一日、体力というより気力の方を使い果たした気がする。
そんな俺の気持ちを見透かすような天音がクスクスと笑う。
繋がった手を軸に、天音と近付いたり離れたり。
音楽は耳に入ってこなくても、何度も同じ事を繰り返すだけだから、身体が覚えていた。
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