アクシデント

ついて来ていた大崎は、慌てすぎたのか足を滑らせて……。

危ない―――!!!

落ちてくる大崎を受け止めた。
衝撃を覚悟したけど、思ったよりも軽くて驚いた。

「大丈夫か?」

耳元で声をかけるが返事がない。

少し身体を離すと、ぎゅっと目を閉じ俯いていた。
かなり怖かったんだろう。

「だ…いじょ…ぶ」

掠れた声の後、ポタリと涙が落ちた。

……こんな光景 以前にも……。
俯いて ポロポロ涙をこぼす女の子……。

―――いつだっけ……?

そんな事を頭の片隅で考えながら、大崎は大丈夫だろうか?と顔を近づけて覗き込む。
ふいに 大崎の顔がゆっくりと上がって……。

――っ!!―――

今 俺の唇が大崎の唇に……。俺 キス……した。

「ごめんなさい。でも ありがとう 助けてくれて。」
「おまえ……いま――。」
「??」

もしかして 気付いてない―?
いや 気付いてない方がいいか?
頭が軽く混乱する。

とりあえず 怪我はないかと聞いたら 反対に聞かれた。

どうも 態度がおかしいらしい。そりゃあ 動揺もするだろ……。キスしたんだから。

――こいつは 気付いてないけど。

浜をゆっくり歩きながら、さっき考えてた事を思い出す。

小さい頃に 泣いてる女の子に話しかけた事。
人魚姫の話しを聞かせたら また泣いて……。
赤い夕日と染まった海の前でキスをした。
きっと 探し出すから――って。
あれは――――?

店を開けてからも そんな事が ぐるぐる頭を駆け回って……。
きっと 変な態度だったんだろう。
帰って来た じいちゃんと大崎が何か話していた。

大崎を送る途中、気になってた事を聞いてみた。
そしたら ますます可能性が高くなって……。
店に戻るなり、じいちゃんに確かめてみる。

「……なぁ じいちゃん。昔、人魚姫の話をした女の子って覚えてる?」
「覚えてるよ。今でも笑顔が変わらない、可愛らしいお嬢さんだからね。」

やっぱり!あいつなんだ。
約束のキスをした女の子は。

――2回目は事故だけど。

……まいったな………。
今夜は眠れそうにない。

瑛side,end
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