02 肩に手に

体育祭当日は晴天。まだ風も日差しも春のまま。
休み時間という括りがない分、体育祭は気が楽。生徒の待機場所はクラス毎だから、通りすがりに話しかけられるだけで長々取り囲まれる事はない。まぁ、それも面倒には違いないんだけど、まだ我慢出来るし。

だけど問題は昼休憩。
こういう時くらい、訳の分からない順番なんてなくせばいいのに。つーか、なにが楽しいんだか。
連れ去られた屋上の一角で、バレないように溜め息。たった1時間が永遠のように長く感じる。

「え〜?もう?まだ早いよ〜」
「ごめんね?でも、ほら。僕、午後の部の最初の方の競技だし、みんなに迷惑かけるといけないから、少し練習しておきたいんだ」

上手く言い逃れて屋上からの階段を駆け下りる。

クラスの為という大義名分があるんだから、文句も出るまい。さすが、俺。
屋上に連れ去られる時に天音が中庭の方に向かって歩く姿を見ていた。
まだ、ここにいるだろうかと辺りを見渡す。

―――いた。でも、あいつは―――?

ベンチではなく、芝生が敷き詰められた一角で、輪になって座る集団の中に探していた背中を見つけて近づくと、見慣れない顔が一番最初に俺に気付く。

―――誰だ?こいつ。

「佐伯先輩、こんにちは!」
「こんにちは。えっと、大崎さん、ちょっといいかな?」

向けられた顔は多分初めて見るはず。

輪の真ん中にマフィンらしきものが広げられているのが見え、そして、探していた人物が振り返った。

「どうしたの?佐伯くん」
「午後からの競技、少し確認したいから付き合ってくれないかな?」
「あ、そうだね。じゃあ、みんな、天地くんも、私、先に行くね?」
「頑張ってくださいね、佐伯先輩、大崎先輩。僕、応援してます!」
「ありがとう。それじゃあ」

天音が天地と呼ぶ男子生徒。やっぱり見覚えはないし、本人が俺を先輩というくらいなんだから1年生なんだろう。

それにしても、こいつときたら、毎回毎回―――。

「いたっ!な、なんでっ?!」
「うるさい。まったく、人の気も知らないで……」
「わ、私、なにかした?!」
「うるさい。それより、練習するぞ?時間ないんだからな?」

中庭を抜け、体育倉庫がある体育館裏を目指す。

やりたいわけじゃないけど、やるからには一番じゃないと意味がない。
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