02 アンビバレント

窓から入ってくる爽やかな風とまだあまり強くない日差し、お昼も食べて満足したお腹を持つ生徒達にとって午後の授業はちょっとした試練のようで。
特に隣に座るハリーは隠そうともせず大きな欠伸を連発して、だりぃだの眠みぃだの、いつ先生に見つかるかとヒヤヒヤさせていた。
おかげで、私自身は眠くならずにはすんだけれども。

「んじゃあな、天音」
「うん。また明日ね」

さっきまで机に突っ伏していたハリーがホームルームが終わった途端勢いよく立ち上がった。
眠そうだったのがウソみたいだけれど、なんだか凄くハリーらしい気がする。
それにワンテンポ遅れて佐伯くんも立ち上がる。

「さよなら、大崎さん」
「佐伯くんもまた明日ね」

落ち着いた声色と物腰だけれど、どこか慌ててるように見えるのは、きっと気のせいなんかじゃないと思う。
生徒達がまばらになる突き当たりの交差点まで、あんな感じなんだろうな。今日もお店のお手伝いなのかな。
そんな事を考えながら教室を出ていく佐伯くんを見送り、私も帰ろうと机の中の教科書を鞄に詰める。

「天音おる〜?」
「あ、はるひちゃん」
「今日はホント助かったわ。お礼にケーキおごるで寄り道しよ?」
「そんなのいいのに。でも、お茶はしたいかなぁ?」

入れ替わりで入ってきたはるひちゃんから辞書を受け取り、机の中に戻す。
今日はバイトもないし、はるひちゃんと食べるケーキなら美味しいのは間違いないし。
早く行こうと腕を引っ張るはるひちゃんに合わせ、校舎を出る。

「えぇ〜?!今日もダメなのぉ〜?」

校門近くでひとつの固まりになっている集団。その中心に居るのは、頭ひとつ分飛び抜けているから容易く誰か分かった。

「なんや、前もこんなん見やへんだ?」
「そうだね。でも、いつもだよね?」
「そうやなぁ。ホント飽きやへんな」

校舎側に背を向けているから私には気付いていない。
このまま知らん顔で横をすり抜けるべきか、なんとか助けるべきか。
でも、横にははるひちゃんが居るから佐伯くんも私も下手な事は言えない。

「天音。なんかええ考えない?」
「いい考え?なんの?」
「佐伯助けるええ考え。助けたったら感謝してあたしらにケーキのひとつでも奢ってくれそう……ちがう?」
「あはは。それは分かんないけど……そうだね……」

佐伯くん達の集団に聞こえないようなのか、小声のはるひちゃん。
お店のお手伝いもあるから早く帰ろうとしているんだろうし、そんな事はないだろうけれど、はるひちゃんなら上手く合わせてくれるかもと鞄を開けて一冊のノートを取り出し、はるひちゃんに目配せをする。
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