04 指先で約束

「あーーー。肩凝った。」

首の筋を左右に伸ばすとパキパキと音がする。
低い背もたれに身体を預けると、自分自身がゆらゆらと小さく揺れた。

「これでしばらくは気が楽だな。」
「そうだね。でも、大丈夫だったかな。私、ちゃんと出来てた?」

膝を揃えて行儀良く座った天音。向かい合った座席の距離は狭く、膝同士がぶつからないよう、俺は天音の揃った膝を挟むように足を広げて座っている。

「大丈夫だろ。あいつら、おかしなとこなかったし。」
「そう…だよね。変だったら言うよね、きっと。」

気にしているはさっきの小芝居の事だろう。
あいつらと少し距離を取ったアトラクションに乗ればいいと今更ながら気付いた俺は、メリーゴーランドの最中に天音と話を付けていた。

「おまえさ、次はアレに乗りたいって言え。」
「え?なんで私?佐伯くんが言えば…。」
「おまえバカ。俺は最初に言っただろ。ここだって西本だったろ。順番的に言えばおまえだろ。」
「あ、そっか。でも、なんで観覧車なの?」

針谷達から見えないよう、前髪が触れるくらいの距離で前屈みになっている俺達。
聞こえるわけはないのに、お互いが何故か小声だ。

「あいつらから離れられるだろ?ここだって、さっきまでと比べたら遠いし。」
「そういえばそうだね。でも……二人乗りなの?観覧車。」

至極もっともな質問。ここから見える感じではさほど大きくはない。
たぶん二人乗り……なはず。でも、どっちか分からない以上万全を期したい。

「じゃあさ、俺が靴紐が解けたとかなんとか言うからさ、おまえもつき合え。で、あいつらは先に行かせろ。」
「えっ?そんな大役−−−。」
「頑張れ。まかせた。」

そしてその小芝居は成功して針谷達とはいくつか離れたゴンドラに乗っている。
誤算はこれが二人乗りだった事だけど、続けて乗れば窓からお互いが丸見えになるかも知れないし、俺にとっては嬉しい誤算だった。

「はるひちゃんとハリー、見えないね。」

針谷と西本が気になるのか、身体を捻りながら背面のガラス張りの窓から上を見上げる天音。また自分自身が僅かに揺れる。

ちょ……、膝が当たってるですけど。

こっちは当てないようにと意識を足に持って行ってるのに、ぼんやりだからか鈍感だからか……この場合はどっちもだと思うけど。

「こら、そんなに動いたら揺れるだろ。」
「あ、ごめん。そんなに揺れた?」
「まあな。怪獣に揺らされたくらいには揺れてた。」
「ひどっ。そんなに重くないもん。」
「どうだかなー。」
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