04 チョップはいつも突然に

奥行きのあるその建物の中は外よりも少し薄暗い。街中にあるゲームセンターとは少し違い、何処か懐かしいようなものがたくさんあった。
いつの間にかハリーから離れた佐伯くんの元に近付き隣に並ぶ。

「ねぇ。どうしてここを選んだの?そんなにゲームがしたかった?」

「バカ、違うよ。ここならあいつらと別行動になると思ったんだ。まさか、針谷がその気になるとは思わなかっ…… 。」

「オイ、佐伯。あっちに面白いモンあるぜ?勝負しねぇ?」

「…………勝…負…?」

はるひちゃんとハリーが何か話してる姿を見ながら佐伯くんが溜め息をつく。まるで、その言葉が聞こえていたかのようにタイミングよくハリーが振り返り、親指を立てた握り拳をクイと奥に向けた。

佐伯くんと二人、同時にハリーの指差した方向を向くと、何段かの棚に縫いぐるみやお菓子が並んだ、よく縁日の屋台にあるような的当てのゲームがある。
ハリーの言葉に反応した佐伯くんがピクリと肩を揺らしゆっくりとその的当てに近付いた。

「僕、こういうの得意なんだ。それでも勝負する?」

「お?やけに自信満々じゃねぇか。そうやってすましてられるのも今のウチだけだぜ?」

「針谷くんこそ。後で泣かないようにね。」

台に置いてあった長い銃を手にニッコリと爽やかな笑顔を向ける佐伯くんの隣に並びハリーも銃を手にする。二人とも笑ってはいるけれど、バチっと火花が飛んでいるように見えてどうしたらいいのか分からずオロオロと見比べた。

―――どうしよう。

学校での佐伯くんじゃなく、普段の佐伯くんが案外負けず嫌いなのはこの一年過ごしてきて気付いた事。
勝負という勝ち負けがはっきりとする事に関してはどんな些細な事でもそうだったと思う。
そんな負けず嫌いな佐伯くんが今ハリーと勝負なんかしたら……。

―――本当の佐伯くんがばれちゃう!

内心一人慌てている私には気付かず長い銃に詰め物をしていた二人がはるひちゃんの声に顔を上げた。

「あれがええ!一番上のクマ!」

「あれはラスボスっつーとこだな。まあ、オレ様ならちょろいけどな!」

「じゃあ、あれを落とした方が勝ちってこと、だね?針谷くん、お先にどうぞ?」

「ヘッ。余裕ぶっこいて、後で泣いてもしらねぇからな。」

はるひちゃんが指差したのは棚の最上段、真ん中にあるフカフカの毛並みをした茶色のクマのぬいぐるみ。かなり大きく、首には赤いリボンをつけていた。

掌を上向きにしながら『どうぞ』と佐伯くんがハリーに場所を譲り、ハリーは銃を構えて照準を合わせると両隣にいる私とはるひちゃんが静かに息を飲む。その瞬間、パン!と乾いた音。

「あ〜。あかん。」

「アイツ、びくともしねぇじゃねぇか。」

コンとコルクの弾が当たったクマが少しだけ向きを変えると、ハルヒちゃんががっかりと肩を落とす。
舌打ちしたハリーがまた銃を構え、一定のテンポで残りの弾を撃ち込んだ。

「だぁーーーっ!アイツ、全っ然動かねぇよ!」

「残念だったね。じゃあ、次は僕だね。」
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