初出勤!
すこし慣れた頃 2客乗ったトレイを渡した。
「これ。2番テーブルだから。」
運ぶくらいなら出来るだろ。
カップが違うから 解るだろうしな。
そこのところを説明しようと、渡した手元から目線を上げる。
「あ。はい!」
大崎は、ちらっとカップを見て歩き出した。
やばい!あいつわかってない!
って言うか人の説明聞けよ。
舌打ちして大崎の元へと歩きだす。
「お待たせいたしました。珊瑚礁ブレンドのお客様は?……こちらはブラジルブレンドになります。……ごゆっくりおくつろぎくださいませ。」
ちょっと待て。なんでわかるんだ?
あいつに見せたことも、飲ませたこともないんだぞ?カップだって コーヒーに合わせた柄じゃない。
それに 接客だって完璧だ。
なんなんだ。いったい。
混乱している俺とは正反対に、じいちゃんは楽しそうに笑っていた。
きょとんとした顔で戻って来た大崎に じいちゃんが声をかける。
「天音さんは、コーヒーに詳しいんですね?」
「あ。好きなんです。」
「それにしても 香りだけでわかるなんて たいしたものだ。瑛も そう思うだろ?」
「あぁ……、 まぁ……。」
曖昧な返事を返しながら、じいちゃんと同じ事を考えていた。
それに 見かけによらない。
前に チーズケーキにコーヒーが合うって言ってたけど 本当にわかってて言ってたんだ……。
その後は 大崎にもオーダーを取りに行かせた。はっきり言って 楽だった。
初心者とは思えないくらい……。