霞みの空

早すぎた花見は、その後芝生の広場で何時間か過ごして公園通りをぶらぶらして。
楽しくなかった訳じゃないけれど、広場での天音の顔が気になっていつも別れる場所で話し掛けてみる。
………何気なさを装って。

「なぁ、お前さ、俺が隣で寝ても気にしないけど…そういうのって慣れてるの?」
「えっ?……えっ…と、慣れてるっていうか……ほら!疲れてる時って誰にでもあるし、眠いときは眠らないと!……特に佐伯くんは…普段忙しいんだし。」

言葉を選んでいるような、はぐらかそうとしているような……。

俺を気遣っていたんじゃない。
俺じゃない誰かを頭に浮かべていたんだ、きっと。

それだけは分かる。……誰かが天音の一番近いところにいる。

「……くん?…佐伯くん?」
「―――えっ?」
「もうお昼休みだけど…大丈夫?」
「…なにが?」

ぼんやりと教科書に目を落とす俺に、さりげなく椅子をひいて座りなおす素振りをした天音が小さく問いかける。

ここまで授業は聞いている、そしてノートもちゃんと取っている。
ただ、頭の端っこであの時の天音の顔が浮かんでは振り払う。そんな事を続けていただけ。

「…女の子…来るよ?準備しなくて―――。」

椅子の背にもたれた天音の怪訝そうな声の途中で授業の終わるチャイムが鳴る。
あ、そうだ、昼休みはこの音を合図に教室を飛び出さないとまた捕まるんだった。

一瞬遅れたテンポ。机の中に慌てて教科書をしまった時にはすでに遅く、クラスの女子に囲まれる。
新学期早々、しかもこんなに気持ちが落ち着かない日にこいつ等を相手になんかしてたら……絶対ボロが出る。

『―――えっと』上手く頭が回りきらないまま何とか言い訳をしようとした俺に助け舟を出したのは……。

「あ、悪ィ。佐伯は今日オレ様とメシ食うんだわ。」
「えーーー?そうなのぉ?」
「ああ。せっかく同じクラスになったしな。ま、男同士友情を育むってわけ。悪ィな。」
「ハリーとじゃ仕方ないよねぇ?じゃあ、佐伯くん、また明日ね?」
「あ、う、うん。ごめんね?またね?」

思わぬ展開に驚きつつも話を合わせた様に女子達には愛想笑いを振りまく。

―――どうして針谷が?

張り付いたような笑顔で見送って針谷に疑問を投げかけようと正面を向くと同時に二人の溜め息。
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