霞みの空

降り注ぐ陽射しは柔らかで、眠くなりそうな暖かさ。
ここのところ睡眠時間が少なかったせいで、身体が沈みこんでいく感覚と共に瞼がゆっくりと落ちて……

「やばっ!!!」

危うく記憶を手放しそうになりながらがばっと身を起こすと、目を丸くした天音が隣でびくりと肩を揺らす。

「どっ、どうしたの?!」
「いや、寝そうになった。」
「え?眠ったらダメなの?」
「…ダメだろ、普通。」

それがいけない事なんだろうか、と書いた顔で俺を見つめる天音に続ける言葉が見つからない。

この現状はどう考えてもデートというものだと思う。
例え付き合ってる訳じゃないにしても。

それなのに着いてすぐ、いや、寝る事自体おかしな事というか、怒るところだと思うんだけれど……。
どう考えても今の状況での俺と天音との温度差がある以上、それを話したところで『デートなの?』とか、『そんなつもりじゃないよ?』とか言われるに違いない。

「最近忙しかったから疲れてるでしょ?眠いときには眠った方がいいよ?」
「いや、退屈するだろ?」
「あ、それなら大丈夫。私、本持ってるから。それ読んでるね?」

脇に置いてあったトートバックからカバーの掛かった文庫本を取り出すと、ほらと俺に見せる。
気にしないでとでも言いたげににっこりと笑うと、あっさりと俺から視線を外しぱらぱらとページをめくり出す。
その姿は妙に手馴れているというか、日常にあるというか。

―――そういえば、前にもこんな事あったっけ。

昼休みの中庭で俺が寝てしまった時、あの時もこんな風に天音は本読んでて……。
肩にもたれ掛かっていたのに特に気にする感じじゃなくて。

「横になった方が楽になるよ?それに、ここはお昼寝に最適な場所だから。退屈になったら遠慮なく起こすから私は大丈夫。」

くすくすと笑いながら、でも何かを思い出しながらページを追う瞳。
その優しい瞳にもやもやしたものを感じる。何か分からないけど何となく嫌な予感。
だけど、そんなあやふやな不確かな感情を言葉に表せるほど俺は器用じゃなくて……。

大人しく横になりながら空を見上げる。
薄いベールが掛かった水色の空は、天音と俺の間にある、見えない壁みたいなのを連想させて無理矢理目を閉じる。
prev 3/5 next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -