気まずい日々と贈り物
前に水族館でカスタード入りのお菓子を選んだから、これも気に入るんじゃないかって。
「ちょっと変わってる。大福なんだが、マシュマロも使ってあってな。」
「そんなのがあるの!?本当に変わってるんだね?」
「あぁ、だけど味はかなりイケる。」
「ありがとう!帰ったら食べてみる!」
『そうしてみろ』と私の頭を軽く叩くと、片手を上げて途中の曲がり角を曲がっていく。
なんとなく話しただけの事を覚えていてくれたのはとても嬉しかったけど、志波くんって本当に甘いものが好きなんだな。
珊瑚礁までの海沿いの道を、貰ったプレゼントが入った紙袋を覗きながら歩く。
みんなの気持ちがとても嬉しくて、思わず顔がほころぶ。
今まで、こんな行事に参加する事はなかったけど、関係ないって思わないでやってみればよかったのかも。
帰ったら、最初にはるひちゃん達が選んでくれたプレゼント開けて……。
あ、ハリーがくれたMDを聞きながらもいいかもしれない。
それから、志波くんおススメの大福……、時間は遅いけど大丈夫だよね?
それに、クリスくんのも気になるし、氷上くんのだって。
今日は珪くんも来ているだろうから、眠るのが遅くなりそう。
「なにニヤニヤしてんだ?」
突然後ろから話しかけられて、びっくりして飛び上がる。
慌てて振り返ると、すっかり身軽になった佐伯くんが鞄一つで立っていた。
そう言えば、気まずいからってろくに顔も合わせてなかったんだった。
ここはいつも通りに『ニヤニヤじゃなくて、ニコニコって言ってよ』と言うべきか、『なんだか話すのは久しぶりだね』と答えるべきか。
でも、はっきり言えば私が避けてたんだから久しぶりなのはおかしいんだよね。
頭の中でぐるぐる考えてると、佐伯くんが不思議そうに首を捻った。
「どうしたんだ?」
「う、ううん。なんでもない。それより、身軽になってるね!?」
「まあな。やれやれって感じだ。」
今日は朝から凄かったよねと、再び歩き出した佐伯くんに並ぶ。
佐伯くんはいつもと変わりなくて、さっきまで気まずいなんて思っていた自分がバカみたいに思える。
「俺は身軽になったけど、お前は増えてるんだな。」
「これ?みんながこの間のお礼って。」
チラリと紙袋に目を向けてポツリと洩らすから、ちょっとだけ袋を開けて中を見せた。
佐伯くんはふーんと気のない返事をして、目の前に見えてきた珊瑚礁に向かって溜め息をつく。
きっとこの後の事が、頭にあるんだろうなぁ……。
簡単に想像出来る、この後の出来事が現実になるのはもうすぐそこだった。