気まずい日々と贈り物

はるひちゃんにも言ったとおり、寄り道もせず真っ直ぐ帰宅。
今日は美奈ちゃんも尽くんもまだ帰って来てなくて、おばさんもお買い物で留守。

―――家の中には私一人。

でも、ちょうどいいかもしれない。

軽く深呼吸して携帯を開く。
前に電話した時は勢いだったから、今回とはまるで違う気がする。

アドレスから目当ての人の番号を呼び出して、もう一度深呼吸。
深く息を吸い、止めた瞬間ボタンを思い切って押す。

あぁ……、当たり前だけど繋がってる。

こっちではきっかり五回のコールの後、少し慌てたような声が聞こえてきた。

『もしもし。どうした?なんかあったか?』
「あ、うん。えっと…… 今、大丈夫?」
『あぁ、平気。どした?』

なんとなく、佐伯くんの声が遠いというか小さい気がする。
それに、どうした?と聞かれると、なんとなく言い出しにくい。
前にも自分から言ったはずなのに。

「あの……ね? 明日の日曜日、よかったらどこか行かない?佐伯くんの気分転換にもなるかな〜って思ったんだけど。」

そこまでを一気にまくし立てる。
どうして前は平気だったのか、今回はどうしてこんなに緊張しているのか、よく分からない。

『え……?』
「あ、あのね!?テストも終わったし、ちょっと息抜きなんかどうかな〜とか思って!」

あははと笑う声が妙に裏返る。なんか私って挙動不審すぎ。
それよりも、どうしてこんなに焦っているんだろう?

『……あぁ。』
「ホント!? あの、まだ場所とか決めてないんだけど、佐伯くん行きたい所とかってある?」
『あぁ……、そうだな……。』

そう話し始めた佐伯くんの言葉が、ピタリと止まる。
聞こえてくる声は最初より大きく感じて、それだけ私が緊張しているのかなぁ。なんて思っていた。

『っと、……やっぱ、止めとく。』
「え?」
『あー。ちょっと用事っつーか……。』
「そっ、そっか。うん、分かった!急に変な事言ってごめんね?」

じゃあねと言って、慌てて電話を切る。

佐伯くんが何か言ってたような気がするけど、なんとなくいたたまれなくて。
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