甘いのがお好き
それにしても、ケーキをお夜食って……。
聞いた事ないよね?あんまり……、ううん、全然。
メニュー表を机に置き、真剣な顔で見つめる志波くんに質問する。
「お夜食、なんだよね?夜中に食べて太らないの?」
「……ああ。太らない。」
「え〜〜?どうして!?私、夜中にケーキなんか食べたら、次の日には体重増えてるよ〜?」
「……走り込んでるから、だろうな。」
よくよく聞くと、志波くんは朝晩走り込みとかトレーニングをしているらしい。
そっか、食べる以上に運動したらいいんだ。
「……私も走ったら夜中に食べられるかな。ケーキ……。」
「……無理だな。」
「ええっ!?どうして!?」
「俺が走ってるのは10キロだからだ。」
「そんなに!?」
それは絶対無理だよ。せめて5キロ……いや3……2キロか1キロだったら走れるんだけど。
そんな事を、机に置いたメニュー表を見ながら内心考えていたら、いつの間にかメニュー表から視線を外した志波くんがニヤニヤと笑っていた。
「なっ、なに?」
「まぁ、最初なら1キロくらいが妥当だな。軽くジョギングでいいんじゃないか?」
「どうして分かるの?私が考えてた事。」
「ククッ、思いっきり書いてある。」
え?そんなにはっきり分かるくらい書いてあったの?
思わず両頬を手で押さえると、引き攣ったような笑いをした志波くんが視線を逸らして肩を揺らした。
……そんなに笑わなくてもいいのに。
でも、志波くんって本当によく笑う人なんだ。もしかして、笑い上戸なのかな?
「志波くん。すっごく笑いすぎ。」
「……悪い。おまえ面白いから……。」
そうかな?そんな事ないんだけどな。
そう話してる間にも、テーブルにはケーキが並ぶ。
私の前にはムースショコラとコーヒー。
志波くんの前には、キャラメルチーズケーキと抹茶のケーキとコーヒー。
私のもだけど、志波くんのも両方新作。
「抹茶と……ピンク色のクリームってなんの味?」
「……イチゴ。思ったより合う。」
早速一口頬張った志波くんが、ボソッと呟く。
そのまま、次のケーキにもフォークを入れ口に入れ、少し目を見開く。
「そっちはどう?」
「……キャラメルとチーズも合う。」
「もしかして志波くんって、かなりのケーキ好きだったりする?」
前から甘いものが好きなんだなとは思っていたけれど、こんなに好きだなんて思ってもみなかったよ。