甘いのがお好き

それから写真集のコーナーへ。
お目当ては『空の写真集』。ネットでは説明しかなかったけど、夜明けとか夕焼けとかいろいろあるらしくて、欲しかったんだよね。

へ〜、ここは人物と風景とで別れてるんだ。

やっぱり大きい本屋さんだけあって品揃えも凄い。

空だからさ行だね。と背表紙に指を当て、自分が欲しいタイトルを捜す。
他にもいろいろあって、一つ一つ見たいけど全部欲しくなっちゃうかもだし。

「あった!」

見つけた本を抜き取り表紙を確認。

そうそう。これだった。
ちょっと値段は高いけど、ずっと欲しかったんだ。
小説と一緒に脇に抱えてふと他の写真集の列に目を向ける。

「……やっぱりたくさんあるなぁ〜。」

海って言っても、海、魚、砂浜……、いろいろあるもんね。
きっと佐伯くんはこんなのが好きなんだろうなぁ〜と手に取った本をもう一度棚に戻す。

「わっ!」

「ごっ、ごめんなさい!」

レジで支払いを済ませ、店を出たところで誰かとぶつかり、持っていた本が入った袋を落とした。

ぶつかった相手はどこかの制服姿の……、中学生くらいかな?
私より少し背が低く、フワフワした髪をしたどちらかと言えば可愛いらしい男の子。

「こちらこそ、ごめんね?よそ見してて。」

「いえ、前を見てなかった僕が悪いんです。……買ったばかりの本なのに……。」

そう言いながら、袋から飛び出した写真集を拾いあげてくれる。
しょんぼりとする男の子を見て私は慌ててその男の子から本を受け取った。

「本当に大丈夫だよ?まだカバーもかかってるんだし。」

「……でも。」

そう眉毛を下げる男の子に『ね?』と笑いかける。
だって、そこまで悪い事されたわけじゃないんだもの。

男の子の「それじゃあダメです。何かお詫びを――」と言うのと同時に後ろから私を呼ぶ声。
振り返ると、鞄を担いだ志波くんが不思議そうに立っていた。

「あれ?志波くん。どうしたの?」

「……俺は買い物。大崎、おまえは?」

「私も。ほら。」

さっき受け取った本屋さんの袋を見せる。そうかと呟いた志波くんが、私の後ろにいた男の子に気付いた。

「大崎の知り合いか?」

「ううん。さっきぶつかっちゃって。……本当にごめんね?」

「悪いな。コイツがぼんやりしていたんだろ。」

何故か一緒に謝ってくれる志波くん。
……ぼんやりって言うところは気になるけど。

驚いた顔で志波くんを見上げていた男の子がハッとしたように頭を下げた。
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