ハッピーバレンタイン 番外編
冷めてしまったコーヒーを淹れ直しに美奈子がキッチンにいる間、大人し天音のチョコの残りを食べながら待つ。
「はい、お待たせ。」
「……サンキュー。今年のは随分頑張ったんだな?」
「うん!今までと違って、時間掛っても大丈夫だから。一緒に暮らせて大満足だよ〜」
いい香りがするモカが入ったカップを置きながら隣に腰掛ける。
確かに去年までは、あまり遅くに帰すのは心配だからと手間が掛らないものを作っていた。
今年は時間を気にせず出来ると大量の本を買ってきて、二人が早くから盛り上がっていたな。
「……それで、二人とも寝不足か?」
「まぁね、私はいいんだけど、天音ちゃんは大丈夫かなぁ?」
「……天音だし、大丈夫だろ。」
「それって、私じゃないからって事?」
ぷっと頬を膨らませる美奈子を笑いながら肩を抱き寄せる。
そう言えば、昔の美奈子もこの日はさっきの天音みたいに真っ赤な目をしてたな。
まぁ、今日もなんだけど。
そうやって一生懸命作ってくれたのが分かってるから嬉しいんだが……。
「お二人さーん、いいとこなの邪魔して悪いんだけどさ、俺もコーヒー貰ってっていい?」
「うっ、うるさいわね!聞かなくても飲めばいいじゃない!」
「はい、はい。お邪魔虫はすぐ消えますって。葉月は今日ゆっくりしてくんだろ?」
「……あぁ、そのつもり。」
「ん、わかった。二人ともお邪魔しました。続きをどーぞ?」
ひらひらと手を振りながら、マグカップに入れたコーヒーを片手に尽がキッチンを出て行く。
あいつも今から食べるつもりなんだろう。
その姿を目で追っていると、ブツブツと美奈子のぼやく声。
「……どうした?」
「絶対邪魔しに来たんだよ〜?」
「そんな事ないだろうけど……。じゃあ、邪魔されないとこ行くか?」
「邪魔されないとこ?」
「……美奈子の部屋。」
トレイにカップとチョコの皿を乗せ扉に向かうと、慌てて美奈子が着いてくる。
それにしても、赤い目だな。
……無理やりにでも少し寝かせるか。