ハッピーバレンタイン 瑛Side
にっこりと笑ってじぃちゃんが珊瑚礁を後にする。天音からのって……。
ちょっとまて。学校ではあいつらが、ここではじいちゃんまでもが?
―――いったいどういう事なんだ。
「あのっ、佐伯くん。」
その声に振り返ると、鮮やかなブルーのリボンに結ばれた箱を抱えていた。
「たくさん貰うから迷惑かもって思ったんだけど、いつもお世話になってるから。」
ずいっと差し出しながらも、『ほんと、迷惑なのは分かってるんだけど』なんて、ブツブツ言っている。
俺の事忘れてるわけじゃないんだ。
ニヤけそうになる顔を必死に抑えながら手を伸ばす。
「サンキュー。……あれ?これって、じいちゃんのより……。」
「そっ、そうなの。佐伯くんのは二つ入ってて……。」
「そっか……。なぁ、30分くらい遅くなるって連絡しとけ。今からコーヒー淹れてやる。」
「え?う、うん。分かった。」
受け取った箱をテーブルにそっと置き、慌ててコーヒーを淹れ始める。
背中を向けて電話を掛けていた天音が振り返って携帯をパチンと閉じた。
「ごめん、急に。大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。でも、どうして?」
「いいから、そこ座って?」
コーヒーをテーブルに並べて向かい合って座る。不思議そうな顔をしている目の前で箱を開けた。
「え?もしかして、今食べるの!?」
「あぁ、せっかくくれたんだし、ってこれタルトとオペラだ。お前が?」
「う、うん、タルトはみんなやマスターと同じものなんだけど、オペラは家族で食べるために作ったの。たっ、食べるのなら、タルトにしてね?こっちは、私も食べて大丈夫だったと思うから。」
家族だけって事は、それ以外は俺だけなんだ……。
それにしても、こんなに大慌てな天音って……。
「ぷっ、分かった。オペラは後でゆっくりと食べるよ。」
「え?そっ、そっか。あ〜〜!それも心配だよ!」
「大丈夫だろ?見た感じ、よく出来てるし。」
前から器用だなっていうか、慣れてるなって思ってたけど普段からやってるんだ。
なんかちょっと意外かも。