ハッピーバレンタイン 瑛Side

店まで戻ると、じいちゃんが表に出ていた。

「瑛、おかえり。」

「ただいま、じいちゃん。すぐ着替えてくるよ。」

箒を手にしているじいちゃんに慌てて裏口に回ろうとすると、苦笑いしながら呼び止められた。

「いや、もうほとんど終わってるからね。しばらく休んできなさい、ここからも長いから。」

視線は紙袋、学校で何があったのかお見通しだ。

「……わかった、しばらく部屋で休んでる。ごめん、じいちゃん。」

「何言ってるんだ。今日のお前に売り上げがかかってるんだからね、先行投資だよ。」

笑って肩を叩くじいちゃんに、もう一度ごめんと謝って部屋に上がる。

上着だけ脱いで目を閉じると、やっぱり気になるのはあいつのこと。

慌てて帰った理由が気になってるんだ。
もしかして、誰か特別な奴に渡しに行ったんじゃないかと。

時間的にはあまりないから、そんな奴がいるなら近くにいるんだ、きっと。

こんなもやもやした気分のままじゃ眠れないだろう、なんて思っていたけれど、少し眠っていたらしい。

浅い意識の中明るい声が聞こえてきた。

「―――いいですか?」

「どうぞ、どうぞ。」

「ありがとうございます。すぐ、着替えてきますね?」

聞こえてくるのは窓の外、今来たんだ。

つーか、何時だ?時計の針はまだ30分ほどしかたっていない。
眠れないなんて思っていたくせに、俺ってなんてげんきんなんだ。

「―――瑛?起きてるか?」

「今行くよ!」

下からの問いかけに答え、慌てて着替える。

今からが大変だな、また愛想笑いばっかりして……。

ただ、誕生日みたいに、その場で食べなくていいから楽だけど。

階段を下りると天音の心配した顔。
あの時と同じ、誰かに心配されるのって妙にくすぐったい。

「今日は大丈夫?」

「あぁ。受け取るだけだからな、前よりはマシ。」

「あ、そっか。今は食べなくていいんだよね。」

思い出したのか、うんうんと頷いている。

なんだよ、それ?意味が分からないリアクションに思わずチョップ。

「いたい……。」

「ほら、開店するからキリキリ働け?今日は俺の事当てに出来ないぞ?」
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