ハッピーバレンタイン 瑛Side

そう思うと天音のチョコをあの場面で受け取るのは嬉しくない。
……ただ、あいつらのヘラヘラ笑った顔は面白くない。

複雑な気分のままで、仕分けをする。
天音達の集まりがばらばらと散りだしたのが、予鈴5分前。

締まりのない顔のあいつらと何事か話すと、天音が席に着く。

「また増えたんだね……」

「まぁな。」

「これって、全部食べるの?」

「あぁ、かなり時間かかるけど。」

返すのも大変だけど、これを全部食べるのが至難の業。

じいちゃんに毎年手伝ってもらって、なんとか消化している。

「ほんとに大変なんだね……」

「こんなのじゃなくてさ、製菓用のにしてくれた方がよっぽど嬉しいんだけどな。」

製菓用ならケーキなんかに使えて一石二鳥、俺も店も助かるのに。

まぁ、学校の女子には口が裂けても言えないんだけど。

店に来る客には言えたらいいんだけど、それもまず無理な話。

「……そっかぁ。」

「ん?どうかしたか?」

「うぅん!なんでもない!」

笑って首を振るんだけど、一瞬曇った顔が気になる。

なんかおかしな話ってしてたか?

それを、確認する時間が俺にあるはずもなく放課後を迎える。

「それじゃ さよなら、佐伯くん。」

「え?あぁ……さよなら。大崎さん。」

慌てたように鞄を掴むと、挨拶もそこそこに飛び出していく。

まぁ?俺には何もないのは分かってたことだし?

だけどさ、今日はあいつだってシフトに入ってる日なんだ。
いつもなら、なにも言わなくても一緒に店に向かうだろ?。
バイトを忘れてることはないだろうけど、なんで慌てて帰る必要があるんだよ。

……まさか、この学校じゃない奴……なんて、あるわけないか。

今までそんな素振り見た事ないし。

一分でも遅刻したらチョップだな、それもかなりきつい一発をおみまいしてやる。

昼休みも他の休み時間も費やしたおかげで、帰る頃の女子共は満足したようだ。
この手荷物の効果もあるのかもしれない。
がさがさと音を立てながらイライラと歩く。

一つ一つは軽いくせに、なんでこんなにかさばるんだ。
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