ハッピーバレンタイン 瑛Side

休み時間毎にも、チョコばかり受け取っていい加減ウンザリする。

昼休みもあちこちに呼び出され、飯を食う暇もない。
ようやく解放されたのは、終わる間際。

結果、飯も食えなかったじゃないか。

両手にチョコを抱え教室に入りかけるとのんびりとした、しかし微妙に違う気がする関西弁。

「そうやなぁ〜 瑛クンは残念さんやなぁ〜」

いったい何が残念なんだ?

教室の中央の大きな固まり、天音達いつものメンバー。
その中に、氷上が居るのは珍しい。

あいつもこういう付き合いするんだ。

それに、楽しげな氷上を見る事自体あまりない気がする。
それに机に並んでるのは、同じもの?

天音に向かって何かを言っていて、天音は困ったような恥ずかしがってるような、そんな顔。

あれって市販品じゃないな。

もしかして、天音が作った?
あいつ、そんなの興味ないんじゃなかったのか。
――って思ってたのは俺だけ、か?

それになんだよ。俺だけ呼ばれてないのかよ。

いや、別にいいんだけどさ。

そんなみんなと同じもの、それも纏めてなんて嬉しくなんかないからさ。
やっぱり、自分にだけのものが欲しい。

―――俺だけが特別なんだ。

そうはっきりと分かるもの。

例えば、今回はバレンタインなわけだからチョコレートって事になるんだが。

両手のチョコを机の上に転がす。

これだって、正直特別だとは思えない。
たった一人の相手に用意するってわけじゃなくて、ただその行為を楽しむため。なんだと思う。

それが分かってるからだろうな。
貰っても嬉しくないのって。
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