私もバイトを始めよう

言われたとおり、いつもの奥の席に進む。机に突っ伏した珪くんは寝ていた。
やっぱり……。
いつもの事だから特別驚く事もなく、起こさないよう静かに座る。

「お待たせしました〜〜〜!あれっ?? 珪く〜ん。天音ちゃん来てるよ〜?」
「ん……? あぁ………おはよう。」
「おはよ〜」
「おはよ。はい!お待たせしました。珪くんは いつものモカ。天音ちゃんには ムンドノーボ。」
「サンキュ。」
「ありがと〜。」

カップを持ち上げると、すごくいい香り。一口飲んでみる……。

「うわぁ…… いい香り! 酸味が爽やかで苦味もちょうどいい! 私 これ好き!!」
「でしょ?」

2人が笑って私を見ていた。
コーヒーを飲みながら 珪くんが口を開いた。

「今日はどうかしたのか?」
「あ!そうだ! 忘れちゃうとこだった!」

この話をしにきたのに、美味しいコーヒーにすっかり頭から抜けてしまっていて、私は えへへと頭を掻いた。

「あのね? 喫茶店でバイトしようかなって思って。どう思う? 私に出来るかな?」
「いいんじゃないか? 美奈子に鍛えられてるから、コーヒーにも詳しくなったし。」
「そんな スパルタみたいな言い方しないでよ! でも、私も大丈夫だと思うよ?パソコンの求人情報に登録してみたら?」
「そんなのあるの?」
「うん! 自分の希望した情報が届くから便利よ?」

美奈ちゃんも 高校生の時使ったんだって!
いい事聞いちゃった!

「じゃ 2人とも ごゆっくりね!」

忙しそうに戻っていく後ろ姿を見ながら、私も美奈ちゃんみたいになれたらいいなって思った。

「ほんと 美味しい……。」

香りを楽しみながらコーヒーを味わう。

「美奈子が淹れてるからな。」
「ごちそうさまです。いろんな意味で。」
「あぁ。うまいだろ? 余計に。」

カップに口を付けながら しれっと返事する珪くん。
ほんと ごちそうさまです。
その夜 教えてもらったとおり パソコンに入力してみる。すぐに 喫茶店の情報が入った。

「これって 早い者勝ちだよね?」

まだ 詳しく読んでないけど……。応募しちゃえ!!
ドキドキとする間もなくすぐ返信が返ってくる。どうも合格らしい。

「水曜と金曜って事は 明日からだね! 頑張ろっと!」

……それにしても 店の名前に聞き覚えがあるような?
―――気のせいかな?
まぁ いいか。と明日に備えて早めに眠った。

天音Side continue..
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