冬のある一日

「今はそう言ってるけど、そのうち淹れたい相手が出来るんじゃないか?」

「淹れたい相手……って、誰?」

「例えば、好きな男……とか。」

「好きな男の子って…… 珪くんの口からも聞かされるなんて思ってもなかったよ」

「俺………も?」

うん。と今日はるひちゃんに言われた事をかい摘まんで話す。

だって 珪くんも尽くんも大好きだもん。
おかしくなんてないよね?

「でね? 渡した時に何か言われるだろって言うから、今年も美味しそうだなって言ってもらえるって言ったの」

「………あぁ。それで?」

「そしたらね? 根本的に間違ってるって。ねぇ 珪くん、どっか間違ってるの?」

「……ぷっ。」

それまでコーヒーを飲みながら聞いていた珪くんが突然吹き出す。

すごくひかえめに、だけど。

でも 肩を震わせてるくらいだから、かなり爆笑してる。

「もう! そんなに笑わなくっても!」

「………悪い。まぁ そのうち分かるようになる。……たぶん」

「そんなに笑いながら言っても説得力ないよ!」

「………ほんと、悪い。」

言葉では悪いって言ってるけど、まだ顔を背けて笑ってる。

そんなに笑うほど、面白い事を言ったつもりなんてないんだけどなぁ。

「……そんなに怒るなって。」

「怒ってなんかないです〜」

「……いずれ分かるようになるから。だから 天音はそのままでいい……と思う。」

「そうかな?」

「………たぶん。」

もう!いったいどっちなの?と珪くんに文句を言おうとした時、立て続けにお客さんが入ってきた。

「あ。私 そろそろ戻るね?ちょっと混んできたし」

「俺も戻る。コーヒー、美味かった。」

「珪くん。美奈ちゃんに後でコーヒー届けるねって伝えてくれる?」

「あぁ。わかった。」

スタジオに戻る珪くんをドアまで見送って、入ってくるお客さんを席に案内する。

さて! もうひと頑張りしなくちゃ!

今日は美奈ちゃんの代わりに来たんだし、少しは役に立たないと!だよね!
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