冬のある一日

「あーー もう!寒いなぁ! 早よ春にならへんかな?」

「ほんと寒いよね。でも1月より2月の方が寒いんだから、まだまだ寒くなるよ?」

「今より寒なったら耐えられへんわー でも、早よ2月になってほしいと思わん?」

「え? どうして?」

寒いのが嫌いなのに、まだまだ寒くなる2月になってほしいだなんて。
はるひちゃんの言いたい事が分からず首を捻る。

「天音! あんた女子高生としてダメダメや!2月と言えばアレやろ!一代イベント!バレンタインデー!」

「バレンタインデー? あ、そっか2月だったよね?」

「あかん!天音!あんたあかんで?こんな大事な日覚えてなかったらあかんで?」

「え?あ、ごめん!」

強い口調で言われ、思わず反射的に謝る。
でも、バレンタインデーってそんなに大事な事かな?

「まぁ ええわ。そんで天音は誰に渡すん?」

「え? 誰って…… はるひちゃんは誰かに渡すの?」

「あたし?あたしは……って!今は天音に聞いとるんやんか!」

誰にって……パパにはちゃんと渡したいけど、今年は送らなきゃ仕方ないよね?
あと珪くんとおじさん、それから尽くん。

「誰にって、家族とか?」

「他は?」

「他って誰かいるの?」

「いるのって!……もしかして天音、男の子にチョコあげたことないん?」

「あるよ!それくらい!」

珪くんは男の人かもしれないけど、尽くんはちゃんと男の子だもん。

「……なんやあやしいなぁ。ウチがゆーとんのは好きな男の子、やで?」

「うん、そうだよ?」

「ふーん、で?答えは?」

「答えってなんの?」

「なんの?って、チョコ渡すくらいなんやで?なんかゆーやろ?」

答え……渡して言われた言葉が答え、なんだよね?
それなら毎年言ってもらってるもの。

「えっとね?今年も美味しそうだな、ありがとうって!」

「……天音、たぶんあたしがゆーとる事と違うわ」

「え?でも言ってもらう言葉でしょ?」

「うん。そーなんやけどな。なんやな?もう根本的に違うんよな。今度ゆっくり説明するわ」

「え?う、うん」

そこまで話したところで、はるひちゃんが携帯をちらりと見る。

「あ!あかん!もうこんな時間や!ほなあたし行くわ!」

「うん、また明日ね?」

「ほんじゃなー バイバーイ!」

元気に手を振り走り出していく。
同じように手を振り返し、後ろ姿を見送る。
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