揺らめく海の底

ぞろぞろと連れ立って水族館へ。
ここの水族館は オープンしてからも増築されているらしい。

今あるのは オーソドックスなタイプの魚とイルカの大型水槽みたい。

入り口でパンフレットを貰って中に入ると すぐにイルカの水槽。
手前は 柔らかい絨毯が敷き詰められ階段状になっていて、所々に カップルや家族連れが座って見ている。

スピーカーから聞こえてくるのは、説明出来ない音。
隣に並んだ佐伯くんが、水槽を見つめながらボソッと呟いた。

「これ、イルカの鳴き声だ……」

「そうなの? これがイルカの声……」

なんて言っていいのか分からないけど不思議な声。でも、なんとなく落ち着く感じがする。

部屋全部も青くて まるで海の中みたい。
水の反射で部屋の中に光が差し込み揺らめいて、海の底に立ってるような感覚。

「海の中にいるみたいだな」
「海の中にいるみたいだね」

みんなはイルカを近くで見るためにどんどん歩いて行くけど、私と佐伯くんは部屋の真ん中でユラユラと揺れる光に動けずにいる。

「なんだか 息が出来るのが不思議。」

「え?」

独り言だったのに佐伯くんが返事するから 思った事を伝えようと顔を見上げる。
ユラユラする光が髪を照らして、まるで海の中で会話してるみたい。

「だって 海の底に立ってるみたいなのに、こうやって話せるんだもん。なんだか不思議な感じでしょ?」

「……人魚。」

「えっ?」

「……いや。なんでも。……そうだな。不思議だな。本当に。」

途中で呟いた言葉は あまりに小さくて分からなかったけど、私の気持ちが通じて嬉しくなった。

「お二人さ〜ん! そろそろ次へ行くで?」

「うん。今行くよ!!……もっとここにいたい感じだけどな……。仕方ないから行くか。」

「そうだね。残念だけど。でも 佐伯くん大変だね?混乱しない?」

「分かってるなら フォローしろ。ほら 行くぞ?」

見えない角度でチョップされる。
痛い…… これで今日は二回目。これ以上増えないようにしないと。

それにしても本当に残念。もっとゆっくりしたいのにな。何度か振り返り 次の部屋に。
みんな 入り口で待っていてくれてた。
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