揺らめく海の底

日曜日は快晴。風が冷たくて寒いけど。

いつもの交差点で待ち合わせた佐伯くんは 寒い寒いを連発。

「俺は夏生まれだから寒いの苦手なんだ」

なるほど。そういうものなんだ。
空気が澄んでていいと思うんだけどな。

「ここの水族館って初めてで楽しみなの。ずっと行きたいとは思ってたんだけど。」

「言えばいつでも付き合ってやるのに。どうして言わなかったんだ?」

「だって 佐伯くん忙しいんだから、あんまり誘うと迷惑―― いたっ!」

突然降ってきたチョップに避けきれず頭をさする。

「バカ。気分転換になるんだから 誘っていいんだ。」

「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど どうしてチョップかなぁ?」

そう。いつもチョップとセット。
それも私だけ。痛いんだよ?ホントに。

待ち合わせのはばたき駅には 一番早く到着。
次に来たのは氷上くんと千代美ちゃん。
その後、密ちゃんが来て、クリスくんに竜子さん。

「まさか大崎さんが佐伯くんを誘ってるなんて思わなかったです」

「え? そうかな?」

「そうねぇ。電話番号を知ってるほど仲がいいとは気がつかなかったわよ?」

うふふっと笑ってるけど、「どういう関係なのかゆっくり聞かせてね?」と目が言っている。何か上手くごまかさないと……

「お待たせ〜〜!って天音が連れて来たんって佐伯なん?なんや あやしいなぁ」

「そんな事ないって!たまたま教えてもらう機会があっただけなんだよ?」

そう。たまたま教えてもらった。夏の花火大会の日。これは嘘じゃないもんね?

「あぁ。大崎さんが引越して来て間もない頃に いろいろ教えてあげてって若王子先生に言われてたからね。それで教えた事があったんだ。結局今まで一度もかかって来た事なかったけど。」

「ね? 大崎さん?」と笑う佐伯くんは完璧なプリンススマイル。
さっきまで氷上くんと話してたはずなのにいつの間にか自然に会話に入っている。

「うん。そういえば、今まで電話した事なかったよね?」

「絶対話合わせろよ?」と目が言っているのが分かるから、さりげなく同意する。
そう見えたらいいんだけど。

「なんで若ちゃん佐伯に言うのやろ?」

「家がわりと近いからね。だからじゃないかな?」

佐伯くんが自然に話すのでみんなが納得する。さすが珊瑚礁で培われた会話術。
私だったらボロが出ちゃうよね。

それからきっちり5分たった頃 ハリーと志波くんの二人が現れた。

「オレのせいじゃないぞ?コイツがチンタラしてるんだからな」

コイツで指を指されたのは志波くん。

「でも 間に合った」

「確かにそーだな!間に合ったけどな!」

相変わらず漫才みたいだなぁ。
この二人って仲いいよね?
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