特別な年賀状

特別な年賀状番外編

とある家の和やかなリビングルーム。
中年の男性と青年が仲良く酒を酌み交わしている。

「はい。珪くん。もう一杯どうぞ?」

「はい。……ありがとうございます」

「もう お父さん!昼間から飲み過ぎ!」

トスンとソファーに座った若い女性は華やかな晴れ着姿。

「天音ちゃん 嬉しそうに出て行ったよ?」

「佐伯くん……だったっけ?彼氏」

「そうそう! でも お父さん!天音ちゃんには内緒だからね?いっつも違う〜って怒るんだから!」

「……それは 美奈子がしつこく聞くからだろ?」

「珪くん ひどっ!そんなに聞いてないよ〜? ……たぶん」

最後の『たぶん』で首を傾げるあたりが怪しいが、自覚は多少あるようだ。

「……やっぱり 電話してきただろ?」

「うん!すごいね!でも珪くんどうして分かってたの?」

「パーティーで あいつの好きそうな恰好にしたから。あれを見たら盛り上がるだろ」

「あれって ……あのドレス?」

「あぁ。あのドレスにあのヘアスタイル。あれを見たら……な」

「え〜〜? 意味わかんないよ〜〜」

「わははは!珪くんも人が悪いな!
まぁ あの天音ちゃん見たらグッとくるだろうね!佐伯くんも 気の毒に!」

「え〜? お父さんまで意味わかんないよ〜〜」

「でも……別に何もしなくても、遅かれ早かれこうなったとは思うんですけど」

「それはそうだろうけどね。しかし…珪くんも策士だねぇ」

「だから 二人とも意味がわからないんだってば!」

「もう 三人ともいい加減にしなさい。いい?その話 天音ちゃんにしちゃダメよ?ホント 佐伯くんもお気の毒に」

キッチンから出て来た中年の女性が、三人を叱り付ける。

「えっ? 今のでお母さんもわかったの?」

「……たぶん わかんないのは、ねーちゃんだけだと思うよ?」

「尽までわかるの?どうして!」

「まぁ ねーちゃんはわからなくていいんじゃない?」

「そうだな。美奈子がわかると天音ちゃんが可哀相だ。なぁ 珪くん」

「お父さん。佐伯くんもですよ?」

「……そうですね。だから 美奈子はわからなくていい」

「え〜〜?! そんなのひどいよ〜〜!」

すでに この家族全員に公認の仲だとは まだ二人だけが知らない。

end
1月1日元旦。

親バカ×2+弟。
小波家の日常。
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