特別な年賀状

神社を出て 人がまばらになっても手を繋いだまま。

何気ない会話が楽しくて、繋いだ手のひらから温もりが伝わってくる。

ふと思った事を、なんとなく口にしてみる。

「そういやさ。あの年賀状の写真。『天使の梯子』ってやつ?」

「そう!気付いてくれたんだ!以前に撮った写真なんだけど、佐伯くんには話してたから どうかな?って思って」

「うん。すぐわかった。海もあった」

「そうなの!だから あの年賀状は佐伯くんにだけなんだ」

「……そう……なのか?」

「うん! だから……内緒だよ?」

そう言って人差し指を唇に当て笑う。

……俺にだけの年賀状なんだ。

「佐伯くんのは海だったね!らしいなって思ったし、すごく綺麗だったよ!」

「そうか?」

「うん! 私も海大好きだから、あの年賀状 写真立てに飾っちゃった」

「え? 飾ったのか? まぁ。いいけどさ」

いつもの場所まで来て、いつものように別れる。

「じゃあ、またな」

「うん。佐伯くん?今年もよろしくね?」

「あぁ。よろしくな。じゃあな」

寂しくなった手を振り、店までの帰り道。
ポケットに入れてあったおみくじを取り出す。
この結果 中吉どころじゃなくて 大吉なんじゃないか?

―――中吉―――

◆願望
叶う。自分の持っている力を最大限に発揮するつもりで取り組むと良い。

◆待ち人
時至りて来る。心長くして吉。

◆失物
出る。身近な人からのアドバイスに耳を傾けると解決の兆しあり。

◆旅行
心機一転の気力湧く。木々の緑多いところが吉。

◆商売/学問
大金に縁あり。資産運用、活用を図るとなお良い。学問飛躍の予感。

――願望が叶う……か――

これ 結構当たるのかも。
それに 神様なんていない。なんて言ったけど……
今日は信じていいかな?

帰ったら 俺も天音からの年賀状をあの写真立てに飾ろう。

天音がくれた写真立て。
俺にだけの年賀状。

今年も いい年になるといいな…… 
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