特別な年賀状

あの上着 次の日には天音の香りは消えてしまってた。

なんだか凄く寂しくなって 早くバイトの日になればいいって。
だから突然思いついたんだよな。

普段の俺は神様なんて信じないのに……
柄にもなく 神頼みしようなんて……

それに朝から届いた年賀状見たら、どうしても会いたくなって。
でも 誘い方が分からなくて今の状況。
……あまり遅いと 人で溢れかえるよな。

ここは―― 勢いで!

そう思い切って短縮ボタンを押す。
数回のコールで電話が取られた。

「もしもし? 俺」

『あ、佐伯くん。あけましておめでとう』

家族と一緒にいるのだろうか、楽しそうな笑い声。
そして天音が『もう!黙ってて!』と話しかけてる。
このまま俺が話してもいいものか悩んだが、そのまま続ける。

「え〜と ……おめでとう。なぁ、初詣行かないか?」

『うん。いいよ!』

「オッケー。じゃあ、ちょっとしたら そっち行くから」

『うん。分かった。じゃ いつもの場所でね!』

「了解。じゃ またあとで」

そう切った後、あっさり了承された事にホッと胸を撫で下ろす。そして気付く。

……ちょっとって、どれくらいだろう……

とりあえず30分くらいだろうか……
いや。もっとか?
なんとなく30分くらいだろうと勝手に決め、いつもの交差点に向かう。
この寒空の下待ちたくもないが、待たせたくもない。
そう思って25分後に到着。すぐに天音が現れた。

「天音、おめでとう。」

「あけましておめでとう。」

そう笑った天音は、晴れ着姿。
ブルーのグラデーションが華やかでよく似合っていた。

「……晴れ着だ」

「どう? せっかくのお正月だから着てみたんだけど」

「え?あぁ。まぁ……似合うような気が…しないでもない」

「どっち?」

「……似合う」

なんとかごまかそうとしたのに、結局白状させられる。

寒空の中二人並んで でもいつもよりゆっくりと歩く。
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