特別な年賀状

その後二人で星を眺めて……

体育館では 明るく華やかな声がするのに、俺と天音の間には静かで穏やかな空気が流れてて。

普段の俺なら絶対寒いはずなのに、むしろ暖かいくらいで。

なんだか不思議な空間に迷い込んだみたいな感じ。

黙っていても 微かに触れる腕があるだけで心地よくて、いつまでもこうしていたい。

同じ気持ちでいてほしい。

空を見上げながら、そんな事を考えてた。

西本が邪魔しなかったら もっと一緒にいられたのにな。

返された上着に袖を通したら フワリと天音の香りがして。

甘い花のような柔らかい優しい香り。

もういないのに まだすぐ傍にいるような。
後ろから優しく抱きしめられてるような。

そんな不思議な幸せな錯覚。

プレゼント交換の時 遠くから天音を見たら どうも志波のプレゼントが回ってきたみたいで……

あんな偶然もあるんだ。
今回は適当に選んだものだったから、あいつの手に渡らなくてよかった。
来年は もっと考えてみようと思う。

その後はすぐに体育館を出た。
誰とも話したくなくて。

最後に交わした メリークリスマス。
それに まだ上着に残る天音の香り。

もっとこのままでいたくて。
自然に消えてしまうまで。

目にも耳にも身体にも 天音が残っているうちに一人になりたかった。
誰にも邪魔されたくなかった。

最後に挨拶くらいはしたかったけど。
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