見上げる夜空

頬に当たる空気は冷たいのに あまりそれを感じない。

肩に掛かった上着からは、海を感じさせる爽やかな香りと、微かに香るコーヒーの匂い。佐伯くんの香り。
隣にいるのに、すごく近くにいるような……なんだか不思議な感じ。

「寒くない? そろそろ返そうか?」

「ん? 大丈夫。なぁ 流れ星ってやっぱ見られないかな」

「流れ星?」

「うん。俺 あんま見た事ないなって」

「あ〜 そういえばそうだね」

しばらく黙って夜空を見上げる。
黙っていても苦痛じゃなくて、反対に同じ物を見てる事が楽しくて嬉しい。

もうちょっと見ていたいな。なんて思った瞬間、私の携帯が鳴り出した。

「ちょっと ごめんね? ――もしもし?」

「天音!どこにおるん?捜しとるんやで?」

「ごっ ごめんね? すぐに戻るね?」

なんだか凄い剣幕に 慌てて電話を切る。
大きく息をつくと クスクスと笑い声が聞こえた。

「西本か? 相変わらずだな」

「うん。そろそろ行かなきゃ。上着ありがとう。佐伯くん風邪ひかないでね?」

「へーき。じゃあ またな」

「佐伯くんは?」

「もうちょっとここにいる。早く行かないと 本気で怒りだすぞ?」

「そだね。じゃあ またね? あ。そうだ」

「ん?」

今まで言い忘れてた事を思い出した。
一番最初に言わなきゃならない事だったのに。

「佐伯くん! メリークリスマス!」

「あ! そっか。メリークリスマス天音。」

佐伯くんも忘れてたのか びっくりした顔。でも すぐに優しく笑った。

「じゃあ 今度こそまたね?」

「ぷっ なんだそれ。あぁ またな?」

ちょっと後ろ髪を引かれる気分で体育館に戻る。
佐伯くんは今からどうするんだろ。
女の子に囲まれるの嫌いだから、ずっと外にいるのかな?

せっかくのクリスマスなのに そんなの寂しいな……
一緒にいられたらいいのにね。
みんなといられたら楽しいのに。
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