向き合う勇気

「どうしたの?」

突然問われて意識を戻す。
かなり見つめていたみたいだ。無意識に。

「え? いや。なんでも」

「そう? ならいいんだけど」

またこの間みたいな瞳。
心配そうな、でも何かを探るような……
思わず視線を逸らす。

「ねぇ 佐伯くん?」

「……なに?」

「……何かあったら話してね?」

「えっ?」

どういう事だ?思わず顔を上げ天音を見る。

「ちゃんと聞くから。だからいつでも話してね?」

そういえば この間も俺の変化に気付いてた。
今回も 俺に悩みでもあると思ってるのか?
それって………

「……どういう……?」

「そのまんまだよ? 伝える事って大切でしょ?」

まっすぐに俺を見つめてからにっこりと笑う。まるで包み込むような笑顔。

「……そう……か?」

なんとなくまともに見られなくて視線を逸らす。本当に聞いていいのか……
聞いて、最悪な答えだったら?

「何かあったら……話す」

こうとしか答えられない。

「うん。わかった」

あっさり引き下がって問題集に目を落とす。

……違う。あっさりじゃない。
今のは俺に逃げ道をくれたんだ。追い詰めないように。

廊下に人のざわめきが聞こえ始め、二人の時間も終わろうとしている。

せっかくチャンスをくれたんだから聞かないと。
出された答えに向き合う勇気はないけど、遅かれ早かれ聞き出さなくちゃいけないんだから。
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