向き合う勇気

テスト一週間前から じいちゃんが天音を休みにした。
毎日学校で会ってると言っても、本当に会ってるだけで話もあまりしない。

針谷と天音が一緒に帰った日から何日かしたけど、二人に変わった様子はなかった。

「ホントに美味しかったんだよ? 今度は、はるひちゃんとも行きたいな!」

「なんで 焼きイモなん? そこから分からへんのやけど」

「私が 焼きイモが美味しい季節だねって言ったから……」

「で、なんで焼きイモ?」

「なんかね?ぽろっと出ちゃって」

「天音って やっぱ変やわ!」

「だって 美味しいじゃない!」

「だから、そこが違うんやって!」

天音の席で 楽しそうに西本と話してる内容に嘘はないんだろう。
次の日に 針谷に礼を言ってたのを見かけたから。

こんな盗み聞きみたいな事してるなんて天音が知ったら 怒るだろうなとか思う。

自分でも 女々しくて情けないと思うんだけど、はっきりと聞く勇気が持てなくて。

仕事中も何か今までと違う気がする。
この店ってこんなに静かだったか?

店に流れてる音楽も、あちこちから微かに聞こえてくる話し声も、いつもと変わりないはずなのに――

「天音ちゃんがいないと 瑛くんも元気ないね?」

「―――そう……ですか?」

「あれ? これは重症かな?」

「―――えっ?」

「……総一郎。 これはかなりだね」

「まあね…… 瑛、今日はもういいから上がりなさい」

「でも―――」

「上の空で仕事されても 迷惑だからね。それに今日は 忙しくないから大丈夫だよ。テスト勉強もあるんだろう?」

「……わかった。ごめん じいちゃん」

「悩みがあるのも若者の特権だからね。まぁ たまにはいいさ。」

優しい眼差しに諭されて、素直に店に一礼して階段を上がる。

店に迷惑はかけたくない。今でも充分迷惑なんだけど。
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