私に出来る事

私がまだ 中学の時。
高校生だった珪くんは、いつもそんな瞳をして美奈ちゃんを見てた。

いろんな事を言いたくて。
でも言えなくて。
いつも 諦めて。

佐伯くんも何か悩みがあるんだ。きっと。

「ねぇ 佐伯くん?」

「……なに?」

「……何かあったら話してね?」

「えっ?」

「ちゃんと聞くから。だからいつでも話してね?」

今じゃなくても いつだっていい。
力になれるなんて考えてるわけじゃないけど 少しずつ諦めて いつの間にかすべて諦めてしまうようになってほしくない。

「え? ……どういう……?」

「そのまんまだよ? 伝える事って大切でしょ?」

「……そう……か?」

不安げに揺れ続ける瞳を少しでも何とかしたくて、出来るだけ明るく笑いかける。
佐伯くんは、少し見開いた瞳をすっと逸らせた。

「何かあったら……話す」

「うん。わかった」

多分 これ以上は踏み込まない方がいい。
それに 廊下に人の気配がしてる。
もう一度問題集に目を落とす。

「……ひとつだけ聞いていいか?」

「うん。いいよ?」

なんだろう?と佐伯くんを見れば、教科書に視線を落としている。

「……針谷とは仲いい……の?」

……ハリー?
どうしてハリーが出てくるんだろ?
そういう疑問が頭に浮かんだけど、教科書を見つめる佐伯くんの瞳がやけに真剣だったから、正直に答える。

「仲いい……って、友達だから仲いいんじゃないかな?」

「……友達?」

弾かれたように顔を上げた佐伯くんと目が合って、驚くと同時に頭の中が疑問だらけになる。
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